このブログは一つの物語です。
この岩峰郡は山の県道ぞいの渓谷に幾つも聳え立っている。だから、僕らはこの県道ぞいに車を止めてそこにテントを張るのだが当然、目の前を車がザァーザァー通り過ぎる。山道であるから交通量はしれているがそれでも危ない時もある。
僕らは夏の暑い盛り、登攀を終えたら冷たいビールを飲もうと、湧き水が勢い良く流れる道路ぞいの排水溝の中に、缶ビールを幾つも冷やしていた。
ある時、雨が降ったのでこの下水の水量が増していた。それで缶ビールが奥の方へ押し流されたのか、入れたはずの缶ビールが見当たらぬ。「おかしいなぁー?」と言いながら酒飲みの北さんが下水に手を突っ込むがそれでもなかなか見当たらない。そこで「うむー」と彼は唸り、ズルズルズルと下水の中に潜り込み、足だけ出して上半身がすっぽりと下水の中に消えていった。
そしてしばらくうごめくとザァーと蛇のように身体をくねらしながら下水の中からぬけ出た。両手には缶ビールをしっかりと握っている。髪もシャツもびっしょり濡れ、下水の中で目を開けていたのか、閉じた目のまま鼻から水を垂れ流しながら缶ビールを両手に掲げ、よろよろと道路の真ん中へよろつく。すると、
「パパーン」
と車がクラクションを鳴らし、彼は“フランケンシュタインの逆襲”のように車を何台も止め、僕らに押さえつけられたのである。
この北さんは大変な酒飲みで、ヨーロッパアルプスへ遠征に行った時怪我をして、僕と一緒に入院していたのだが足を骨折して動けぬ彼は僕の病室へ“ジョニ赤(ジョニ黒より安い)を二本買っちきてくれんか”と汚い日本語で書かれた伝言をフランス娘のナースに手渡した。そして、僕らは山間のこの静かな病院で「月が出た、出た」と幾夜も歌った。さらに彼はこの遠征の帰り、あの石膏をぶ厚く巻いた足で、大韓航空機が帰路立ち寄る韓国で遊郭へ遊びに行ったらしい。中野が「北さん、その足でどうやってやったんかい?ちょっと図に画いて説明してもらえんかい」と訳の分からぬ質問をしていた。
この岩峰郡は山の県道ぞいの渓谷に幾つも聳え立っている。だから、僕らはこの県道ぞいに車を止めてそこにテントを張るのだが当然、目の前を車がザァーザァー通り過ぎる。山道であるから交通量はしれているがそれでも危ない時もある。
僕らは夏の暑い盛り、登攀を終えたら冷たいビールを飲もうと、湧き水が勢い良く流れる道路ぞいの排水溝の中に、缶ビールを幾つも冷やしていた。
ある時、雨が降ったのでこの下水の水量が増していた。それで缶ビールが奥の方へ押し流されたのか、入れたはずの缶ビールが見当たらぬ。「おかしいなぁー?」と言いながら酒飲みの北さんが下水に手を突っ込むがそれでもなかなか見当たらない。そこで「うむー」と彼は唸り、ズルズルズルと下水の中に潜り込み、足だけ出して上半身がすっぽりと下水の中に消えていった。
「パパーン」
と車がクラクションを鳴らし、彼は“フランケンシュタインの逆襲”のように車を何台も止め、僕らに押さえつけられたのである。
この北さんは大変な酒飲みで、ヨーロッパアルプスへ遠征に行った時怪我をして、僕と一緒に入院していたのだが足を骨折して動けぬ彼は僕の病室へ“ジョニ赤(ジョニ黒より安い)を二本買っちきてくれんか”と汚い日本語で書かれた伝言をフランス娘のナースに手渡した。そして、僕らは山間のこの静かな病院で「月が出た、出た」と幾夜も歌った。さらに彼はこの遠征の帰り、あの石膏をぶ厚く巻いた足で、大韓航空機が帰路立ち寄る韓国で遊郭へ遊びに行ったらしい。中野が「北さん、その足でどうやってやったんかい?ちょっと図に画いて説明してもらえんかい」と訳の分からぬ質問をしていた。



























