2013年1月25日金曜日

Gallery-16

南風

パプアの漁猟

Mountainの池

幸福の木

太平洋航路

中国の山水

地球

ヨーロッパアルプス

虹

宇宙からのUFO

67今どき破天荒な男達の物語


そこでオカルト好きの山下のペンションに「リーン」と電話が入り
「ああ、中野やけど、今から二十名程団体客を回してあげるからね・・・」
と威張って言う。慌てて奥さんが
「うちはペンションだから十二、三人位しか泊まれないし、今日は連休だからうちもいっぱいですよ」
と言うと
「そうかなぁ・・・しょうがないなぁ・・・何処か泊まれるところ知らんですか?今、団体が入ったんやけれどこっちも満員であふれとる」
と言って受話器を置く。
 中野はホテルとペンションを同じように考えているらしいが、泊まり方も客層も全く異質のものであるということを知らないようであった。
 そして、何日かして、再び山下のペンションに電話が入る。
「ああ、中野やけど、今から団体客を四十名程連れていくけどいいかい?」
と言う。奥さんはもう何も言おうとはしなかった。

 僕らはよくこのペンションで彼らと彼らの友人らと酒を飲んだりするが、この友人の中で、湯布院で非常に流行っていて、旅館や食堂を営んでいる所に勤めている友人が居て、酒を飲みながら彼が
「中野は変わったやっちゃなぁ・・・しかしあいつは礼儀を知らん」
と言うのでどうしたのか?と彼の話を聞いてみると、ある日突然中野から電話があって
「明日の日曜日の昼に客を五十人程連れて行くから、そこの食堂に予約してくれんかい?一人二千円でどうや・・・」
と言うのである。
 彼はそこの喫茶店を任されていたが食堂の方は別である。それに此処は非常に客が多く、休日の食堂は行列が並び、それに高級な料理であるため昼食でも一人一万円、落としていくこともざらであった。そこを、丁度昼食時に占領され、一人二千円というのは割りの会わぬ無茶苦茶な話である。それでも、中野も困るだろうと思って食堂へ行き、何度も頭を下げて予約を取ってやった。そして、天気の良い日曜日、その上品な食堂は中野が引率する農協の団体さんが貸り切って外からの客は入れなかった。
 店にえらく迷惑をかけて、謝って歩いた彼は
「おかしいなぁ・・・?これだけしてあげたのに中野から何の礼の電話もない。菓子箱ひとつ持って来ても罰は当たらぬはずだが・・・」
と言うのである。それを聞いた僕は
「あはは。中野はあんたのことを『せっかく客を世話してやって礼のひとつも言って来ん。菓子箱ぐらい持って来ても良さそうなものに・・・無礼な奴だ!』と言って、今頃何処かで此処みたいに酒を飲みながら『あいつは礼儀を知らん!』とか言っとるかも知れんぞ」
と言うと、山下ら夫婦と彼は顔を見合わせ、そうか?という顔をしたが、信じられん、という顔もした。
「もし、そうやとしたら、あいつはとんでもない奴やなぁ」
と彼は言っていたが、彼はまだ中野をよく知らぬようであった。

2013年1月24日木曜日

Gallery -15

夕立の後

恋する乙女

サハラ縦断

広東州

アラビアのモスク

サハラの砂漠のオアシス

氷壁を登る

北アルプスの山小屋

山あいホテル

九重連山

66今どき破天荒な男達の物語


 こうして中野の就職の世話に飽きた僕は、中野に飯を食わせるぐらいなら、女の娘にでも食わせた方がまだましだと、飯をたかる中野を避け平和に暮らしていた。
 その後、奇想天外の山さんから中野が就職したという話を聞いた。別府のホテルの営業ということであった。
「ホテルの営業をしてもあまり勉強にならないし、休日は遊びに行けまいに」
と僕が言うと山さんは
「いや、そのホテルのオーナーが大層中野を気に入って、働いてくれるように頼んだらしい。中野は、そこまで、こんなわしみたいな男を気に入ってくれるならと、そこで働くことを決めたと浪花節に出てくるようなことを言っていた」
と言う山さんの話を僕は
「ふーん」
と聞いていたが、あいつがそんなことを言ったかい・・・?と、どうも納得できずにいた。
 この神話は後に完璧に覆されるが、ともかく中野は某大手ホテルの営業マンとなった。

 船乗りの洋一が
「おい!中野がホテルに勤めることになったらしいなぁ?」
と僕に聞くので
「うん」
と答えると
「ふーん、そりゃ何かあるなぁ・・・中野がホテルねぇ・・・?」
と、刑事コロンボみたいな顔をして無精髭を撫でていた。
 その後、洋一が中野と会った時
「おい、中野!お前、ホテルで女風呂が覗けるやろ?」
と言うと、どうして知ってるんだ?という顔をしながら
「あんた、よう知っとるなぁ・・・見とるんやないんかい?」
と答えていた。
「は、はーん、やっぱりお前、それがあるからホテルなんかに勤めたんだろう?」
と洋ちゃんに見透かされたように言われると、中野は頭を掻きながら
「そうやぁ」
とニタニタしながら答える。そしてすかさず
「しかし・・・最近の若い娘はええ身体しとるなぁ。身体の線が違うみたいやなぁ。なんでやろう?食い物が違うからかなぁ・・・?」
とムキになって喋っていた。

 こうして彼はホテルの営業マンとして、学生ズボンではないか?と思われる黒いズボンに、それと似通った黒っぽいブレザーを着て、僕のあげたスカイブルーのネクタイを締めると
「どうかい、スーツに見えんかい?」
と言っていたが、今時、アイロンの掛け過ぎでテカテカ光るズボンをはいている人間も珍しいが、ブレザーは、ズボンとは色は似ていても生地は全く別のものであった。
 彼の仕事は、会社や公共施設を廻り団体客を取ってくることであったが、彼に言わすればホテルの“名前”が通っているので皆、“名前”で使ってくれるということであった。
その別府でも大きい方のホテルには確かに客が多く、休日や連休なぞはさばききれない程だという。

2013年1月16日水曜日

Gallery-14

富士

北回帰航路

越冬

花

UFOと月

チベット

韓国の下町

五色ケ原

五色ケ原ポエム裏面

旅立ち

旅立ちポエム裏面

65今どき破天荒な男達の物語


 また、彼は飯を食ったり茶を飲んだりしている時、ふいに
「あっ!しまったぁ!」
と大声で叫んで残念がるので僕はびっくりして
「どうした?」
と尋ねると
「いやぁ、今、良いことを思い付いとったのに忘れてしもうたぁ、紙に書いときゃ良かった。またや・・・・」
と残念がる。
「わはは。お前はアラブ人みたいな奴やなぁ。ターバン巻かなきゃ、皆、頭から出て行くぞ」
と笑うと彼はむすっとして
「あんた、昔、アラブで人を殺したやろう?」
と僕の顔をじいーと見て言う。レストランの若い客の視線が、くっ、と僕に来る。
「お前、人聞きの悪い事言うなぁ・・・何故、俺がアラブ人を殺さなきゃならんのか?」
「いやぁ・・・確か昔、そういうのを聞いたことがある。あんた、殺したやろう?」
と再び刑事のような顔をして、人を透かすような目をして僕を見る。
「あれは・・・俺じゃなく、そういう話を聞いたっていうだけのことじゃ!」
「ほんまかい?」
とまた怪しげな顔をして僕を見る。

 確かに、僕がヨーロッパ旅行中に知り合った日本人旅行者がアフガニスタンで強盗に襲われ、格闘になり、紐でアラブ人の首を絞めて殺して来た、という話を中野に聞かせたことがあったがそれを僕と勘違いしているようだった。
 僕も若い頃から外国をさんざん暴れまわってきたが人まで殺した覚えはない。その僕と中野が、ある日山の裾でペンションをしている、元スイスシャレーの山下夫婦の所へ夜遅く尋ねて行った。
 その時もやはり中野の就職の世話で、近くに彼を連れて行き、そこの知り合いのオーナーから御馳走になった帰りであった。此処まで来て素通りするのもなんだからと、夜、二人でペンションの大きな犬に吠えられながら訪ねて行くと、夫婦は椅子に腰掛けてテレビを見ていた。
「おお、今晩は」
と、中野と二人で客の居ないペンションに上がり込む。

 ああ、みっちゃんと中野か、よう来たなぁと立ち上がりビールでも持って来るかと思っていたら、夫婦とも知らん顔をしてテレビを見ている。いつもと違い、愛想が全くない。どうしたんだろう・・・?と、中野と二人で顔を見合わせ、何か悪い事でもしたかなぁ・・・?と考える。そこへ山下が、しらっーと振り向き無表情の顔で
「何か、用かい?」
と白けた口調で言う。奥さんも不安そうに見ている。
「友だちがわざわざ訪ねて来たのに何か用かい?はないだろう」
と言うと、山下は無表情さをひとつも変えず何か警戒したように
「みっちゃん、あんたさぶちゃんや洋ちゃんとうちに来たことはあるが、中野と来るのは今日が初めてやろう。相乗効果ということもあるからな!」
と素早く言うと、再び無表情にテレビの方を向いた。奥さんも緊張している。
 夜更けに、中野と僕が揃ってこんな山奥に現れたのはきっと何かある、何をたくらんでるのだろう・・・?と山下夫婦は警戒したのである。
 あまり二人の機嫌が悪いので、僕と中野はそそくさとペンションを引き上げたが、相乗効果とは山下もひどいことを言うもんである。

2013年1月10日木曜日

Gallery-13

上り最終

火星

上り最終‐Ⅱ

アラスカ

未来都市

地のはて

暗黒

山裾

死の世界

あーらら アラスカ

64今どき破天荒な男達の物語


 僕は物の扱いが“雑”なので、この伊達眼鏡のフレームが皆曲がってしまっていた。眼鏡屋へ行けば無料サービスで直してくれるが、こんなに沢山のガラスの眼鏡を持っていくと詐欺師か何か?と間違われそうで行きにくかったのである。
 しかし今日は、中野が居る、中野が一緒なら恥かしくない、と彼を誘って眼鏡屋へ行くことにした。彼はやはり失業者らしいヨレヨレの服と靴はズックであった。
「いらっしゃいませ!」
玄関に入ると若い女店員の声が掛かり、係員がさっ、と近づいてくる。大手眼鏡店の本店であった。眼鏡類だけでなく、宝石類も多く店内はキラキラとしていた。上品ぶった御婦人の多い店でもある。
「まあ、悪いけど、フレームが曲がってるんで良くしてもらおうかねぇ」
と、ごろごろとガラスのはまった異なったフレームの眼鏡を六個、ショーウインドウのガラスケースの上に置くと、店員は
「はっ!」
として僕の顔を見る。が、僕は中野が居るから恥かしくない、恥かしくないと胸の内で言い聞かせ、知らん顔をして立っていた。


「しばらく、お待ち下さいませ」
と、さすがに大手眼鏡店らしく店員は沢山の伊達眼鏡を抱えると、幾度も頭を傾けながらゆっくりと奥の方へ入って行った。
「ほっ」と、ひと息吐いて、さて、中野は?と店内を見廻すと、店の娘に大きな声で
「スキューバダイビングの眼鏡が有るでしょう?見せて下さい」
と言っていたので、僕は、ふーん、そういう眼鏡もあるのか?と思い店の内をぶらぶらしていた。すると、一瞬、店の中の話し声やざわめきが止み、しーん、となった。どうしたんだろう?と、あたりを見わたすと、店のキラキラしたガラスケースの上に置かれた、さらにキラキラした丸い小さな置き鏡の前で、中野が真っ黒い水中眼鏡を掛け、横や斜めを向き、身体をねじったりしながらポーズをとっていた。その前には、店の娘が何とも言えぬ顔をして茫然と立ちすくみ、中野をみつめていた。店中の店員やお客は皆、唖然と中野を見ていた。
僕は恥かしさと笑いが込み上げ、思わず身体をくねらし、出来上がった眼鏡を手に取るとそれらを抱きかかえるようにして中野を呼び、慌てて店を出た。背中に、ぐっと視線を感じた。

 この頃の別段することのない中野は、とかく僕を呼び出しては飯を食いに行こう、行こうと誘った。誘うが、誘った本人は代金を払わない、という恐ろしい誘い方である。
 僕も、なんとか中野の相談になってやろう、と見つけて来た仕事をいろいろとアドバイスしてやっていた。「何で俺がこいつに飯を食わせて世話をせにゃいかんのか?」と、腹が立ってくるが、そこは腐れ縁の友だちのことである。 
 中野はおもしろいことに昔から“ティ”の発音ができなかった。
「ねえちゃん!スパゲッチイをくれんかい」
「チッシュペーパーを取ってもらえんかい」

と完璧に“チ”になるのである。よくこれでフランス語が喋れるようになったものだと感心してしまう。

2013年1月1日火曜日

謹賀新年

読者の皆さん

あけまして
おめでとうございます。
本年も投稿してまいりますので
昨年同様によろしくお願い申し上げます。

平成25年 元旦 ワタ