2011年12月2日金曜日

24今どき破天荒な男たちの物語

このブログは一つの物語です。

初めての方は、1からお読み下さい。
今どき破天荒な男たちの物語の1 



 この山下、ヨーロッパに渡り在欧の中野とパーティーを組み、アルプスの峰々に挑むわけだが、中野が例のように汚くテント内を散らかし、汚れたパンツをぽんぽん投げ捨て、あげくのはてにテント場をうろうろしていた、山下に言わせれば「臭くて堪らぬヒッピーのような日本人娘」をテントに連れ込んだ。そして、ついに山下はテントを出て、別の日本人パーティーのテントに居候することになった。「夜な夜な、隣であんな声聞かされちゃぁ睡眠不足になる」と言うことであった。

狭い二人用のテントに住み着く女も女だが、他人がすぐ隣に居るのに、遠慮もなく事を行う中野とその女の神経がよう分からん。
 こうして、ぶりぶり言って帰国した山下は「中野は当分日本に帰る意思も金もない」と吐き捨てるように言った。

 僕らはその山下の経営する喫茶“スイスシャレー”へよくたむろするのであるが、落ち着きのない三郎はマンガを読み終わると、僕に「おい、飯食いに行こう!」と誘う。飯を食いに行こうって、友だちの喫茶店に居るのに此処で食えばいいじゃないかと言うと「俺りゃ、同じ所にじっとするのが嫌なんじゃ」と半ば投げやりに言い、また一時(いっとき)して、「おい!コーヒー飲みに行こう」と誘う。僕は何も言わずに雑誌をめくる。落ち着きのない奴め!店に入ってまだ三十分も経ってないじゃないか。

 彼は同じ場所に居て、ある限界が過ぎると貧乏揺すりをしだす。そして何処の店に入っても、さっ、とマンガ本を握る。また山行の列車の中では、ぶ厚い少女漫画を買ってきては一生懸命読んでいる。僕が車窓にもたれかかり缶ビールを飲みながら、流れる風景を眺めぼんやり旅情に浸っていると、三郎がさも同情するような顔をして「おい、読むか?」と言ってぶ厚い少女漫画をバリバリと二つにちぎり僕に差し出す。
「俺はそんなものは読まん」と言うと
「そうか?」「でも退屈やろうー」
と再び、ぼぉーと良い気分でいる僕に同情の目を向ける。

 また、僕らはよく二人で船乗りの洋一のアパートへ彼を誘いに行った。天気の良い日曜日である。山へ行かぬ時は何処かへ遊びに行こうというわけである。が、彼の部屋は薄暗く、彼はコタツに入り丸くなってテレビを見ている。三郎がバタバタと部屋へ入り
「おい!今日は天気がいいぞ、こんなところに居ると腐ってしまうぞ!」と怒鳴るように言うと
「俺は此処でテレビの番をせにゃいかんのじゃ!」とコタツの中で身じろぎもせず洋一が答える。
「えーい!盛り上がりの欠ける奴じゃ!」と、投げ捨てるように三郎が言い返す。

 洋一は日頃はおとなしく温和な男である。あまり動かず
「おい!久しぶりに外へ出ろうと思うんじゃが、世間の人達はどんな格好して歩いとるかのぉ。セーター着て出たらおかしいかのぉー」と尋ねる。
彼は若い頃から船に乗り、休暇の時は山か六畳、四畳半二間のこの部屋に居る。中野の例の居候の後、彼は船に乗るので長らく留守にするこのアパートに幾つも鍵を掛けていた。見送りの時、僕が「おい、洋ちゃん 中野がお前の留守の間にこの部屋に忍び込んで住もうとか言ってたぜ。それか、万国旗やビラビラしたのをいっぱい貼ってモーテル部屋にしたら儲かるなぁーとも言っとったぜ」と脅かすと洋一はこの世の終わりのような暗い顔をした。





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