2011年8月17日水曜日

15今どき破天荒な男たちの物語

このブログは一つの物語です。

初めての方は、1からお読み下さい。
今どき破天荒な男たちの物語の1 


 中野の脳細胞は一体どうなっているのか?一度覗いてみたいと思っているが、どうも奴には“恥かしい”という観念と“冗談”という観念がインプットされていないような気がする。冗談みたいな人間に冗談が通じないというのもおかしな話しであるが、本当に彼の頭脳の当用漢字辞典には“冗談”という字は載っていないのである。だから彼に冗談を言った人は思わぬ目に合うことになる。むろん世間上の社交辞令も禁句である。
 ある登山の先輩が、夫婦仲が悪いのか、何か猥談をしている時、中野があまり目の色を輝かせるので、女性に不自由している中野に向かって、「中野、お前そんなに困っているならうちの女房をいつでも貸してやるぜ」と冗談で言っていた。
翌日、仕事を終えた先輩が自宅で風呂に入りビールを飲んでくつろいでいる夜半、「ピン、ポーン」とベルが鳴って中野が訪ねてきた。先輩は「こんな夜半に、なんだろう?」と思ったが、わざわざ訪ねて来た中野を玄関に入れると「まあ、ビールでも飲め!」と言ってコップを差し出す。中野はビールを飲みながら流し目で
「奥さんはどちらですか?お風呂ですか?」
「子供はもう寝ましたか?」
と、家の中をキョロキョロ見廻している。先輩は「はっ!?」と昨日の自分の発言を思い出したが、「まさか・・・?」と思い直し、中野にビールを注ぐが中野の目はあまりにも血走っていた。
 こりゃいかん!奴は昨日のことを本気にしたと察した先輩は、奥さんが風呂から出てくる前に慌てて彼を帰らせた、という恐ろしい話である。
 また、山下というオカルト好きでやはり同年代の友人が、街中の綺麗なレストランへ勤めていた頃、山へ行くのにそのレストランの前で待ち合わせをしていたのだが、冬の寒い中、中野が開店前の鍵のかかっている店の前に立って待っていたので、次の待ち合わせの時、
 「寒いから中へ入って待ってていいよ」と店の鍵を渡した。そして山下が「お待たせ!」と開店前の薄暗い店へ入ると、な、なんと、中野が綺麗なフロアーいっぱいに登攀用の金具やザイル、その他もろもろの物をバラバラと広げていた。昨夜、綺麗に掃除したばかりの店に、泥や、何が付いているのか分からぬ金具を並べられ、汚れるどころか床に傷でも付いたら大変である。綺麗好きの店のマスターが見たら両手を上げて嘆く光景であった。
「お、お前!何かこりゃ?」と山下がびっくりして尋ねると、「いやぁ、暇やから少し整理でもしようかと思うて」と言っていた。



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