2013年4月24日水曜日

79今どき破天荒な男達の物語

奇想天外の山さんが
「うちのクラブは、何か、社会適応不適格者集団みたいだなぁ」
と難しいことを言っていた。
皆んなそれぞれ齢をとっていないかのように、ひとつも変わらず若かった。僕らは皆、10年来の付き合いであるが、良いおっさんが、「~ちゃん」とか「~さん」とか、名前をすべて省略して呼んでいた。可愛いもんである。



 やはり、うちのクラブ員である産婦人科の先生は、本名は吉田という立派な名字があるが、すぐ、よっちゃんになってしまう。
「おい、よっちゃんは今日、お産が多いから会合には来れないらしい」
「へぇー、人の後始末するのも大変だなぁ」
と、例会場の高級喫茶店で話していると、上品そうな奥様方のお客が、じろっ、と睨む。
 僕らが名字や名前を短縮するのは、長い名を呼ぶのが単にめんどくさいだけであるが、不思議なことに中野だけは短縮されてなかった。これは、中野に~ちゃんとか呼ぶのはかなりの抵抗があるのと、寒気をもよおしてくるからだと思う。

2013年4月17日水曜日

78今どき破天荒な男達の物語

 それにしても、中野の女房になる女の顔を拝みたいとずいぶん前から思っているが、これは密かにそう思っている人も居るであろう。が、居ない人の方が多いかも知れない。しかし、これだけ人間が居るのだから、一人ぐらいはそういう人が居てもおかしくはないと思っている。
 以前、彼はアラブでホモのアラビア人に付きまとわれ、襲われかかったと言っていたが、その話を聞いて、僕は地球上にはまだ謎めいたことや恐ろしいことが沢山あると改めて感心したのであった。
 引越しも終わり皆んなでわいわい言って酒を飲むのは楽しいもので、夜遅くまで話が弾み、今度、ひさしぶりに皆んなで宮崎の岩峰へ岩登りに行こうということになった。

 そして、よく晴れた土曜日、僕ら仲間は何年ぶりかに揃い、宮崎の岩峰郡へと向かった。


メンバーは奇想天外の山さん以下、歯科技工師の三郎、中野、船乗りの洋一、僕と、哲学者の竹さんも来ている。奇想天外の山さんと、つい先日結婚した洋ちゃんを除けば皆、チョンガーである。皆、三十を超えていた。哲学者竹さんや、酒飲み北さんは三十代後半にさしかかろうとしていた。

2013年4月10日水曜日

77今どき破天荒な男達の物語

 ようやく片付いた新しいアパートで、皆んなでビールでも飲もうかと思った頃、
「ピンポーン」
と中野が訪れる。
「いやぁ、もう終わったのかい?早いなぁ」
と、とぼけて入るが、何処の世界に夕方から引越しをする家があろうか、夜逃げじゃねえかそれじゃ。
「いやぁ、遅うなった、遅うなった」
と何時(いつ)もの調子で、ホテルから貰った?というビールケースを抱えて部屋へ入って来るが、このように彼はわりと景気が良い時は気前良く、お土産を下げてくる時があった。彼の家は土佐で農業をしているが、田舎から送ってきた果物なぞをよく
「これはあんたにやるんやないんやぜ。あんたのお袋にあげるんやぜ」
と、しつこく念を押して僕にくれたりしていた。
 彼は自分の里のことはあまり喋らないが七人兄弟の五番目ぐらいらしい。
「わしはどうでもいい身分なんや」


と威張っていたが、彼の他の兄弟も一人ぐらいは見たいものである。女の兄弟がいたらどうしよう。そういう人とは生涯、御対面を御遠慮したいものである。おもわず吹き出しそうになってしまう。

2013年4月3日水曜日

Gallery‐25

スイスの古城

歌舞伎

湖畔の渡し船

パリの街角

ヒマラヤ山脈

76今どき破天荒な男達の物語


 さて、披露宴は盛り上がったが気になったのは中野である。洋一の母や親戚の者がビールを注ぎ、頭を下げて挨拶に廻って来ると、中野はさっと立ち上がると
「いやぁ、良かったですねぇ、お母さん。いやぁ、本当に良かった!」
と言って、お母さんの肩をポンポン叩く。隣で僕が
「お前、表現がオーバーだと、何かいやらしいからやめろ」
と、ささやくと、中野は不満そうな顔をする。
「お前の良かったというのは、ようやく結婚出来て、やっと結婚出来て良かったなぁという意味に聞こえるぞ」
と、さらに彼の耳もとでささやくと
「ははは、分かるかい?」
と僕の方を向いて笑った。
 今度は洋一の兄がビールを持って廻って来ると、中野はまたもやさっと立ち上がり
「いやぁ、お兄さん良かったですねぇ、いやぁ、本当に良かった」
と、お兄さんの両手を握り、振りながら叫んでいた。
 僕はもう何も言わずにビールを注いで飲んでいた。

 洋ちゃんの新しいマンションと呼ぶアパートは、やはり温泉郷から離れぬ圏内に止まった。
 僕らは引越しを手伝おうと彼のアパートに行って唖然とした。彼ら夫婦は荷物を何もマトメていないのだ。二人とも引越しをしたことがないのである。
 僕らは箱を何処からか持って来ると、乱暴にザァーと、テレビやタンスの上に乗っている物を次々に流し込んだ。驚くことにこの洋一という男、物持ちが良く、~小学校~年と書かれた筆箱や、昔、中学生時代に作ったであろう地球儀なぞが転がっていた。
 婆ちゃんから貰ったという大正時代の桐のタンスを、奇想天外の山さんのトラックに積み込むと、ガタガタと乱暴に走って新しいアパートへと向かった。