2011年9月11日日曜日

ワタの旅と冒険-15(砂漠の果ての-4)

このブログは一つの物語です。
初めての方は、1からお読み下さい。
ワタの旅と冒険-1



 小さい街にはホテルも無く、野宿、野宿で進んだ。太陽は真赤に膨れ、ギラギラとした光を浴びせていた。暑い。ザックの中には羽毛服とか、羽毛の寝袋が詰まっているが、この陽のガンガン照りつけ、クソ暑いときに、なんで羽毛服を担がにゃならんのか、と腹が立ってくる。おまけに、めちゃくちゃ乱暴するもんだから、腕の縫った傷の跡がほぐれかかって痛んだ。
 さて、その日は砂漠を歩いたあと、サバンナかステップの木の陰で眠った。砂まじりの風が吹くので、砂粒が荷や身につかぬよう、頭の所に黒いコウモリ傘を立てて、寝袋で眠った。夜明け頃の心地よい夢を見ていた時、ふと、何か?気配がするので、「はっ!」と眼を覚した。すると、髭を蓄えた山賊のおっさんの顔が息がかかるほど近くにあった。眼をまん丸にして僕の顔を見ていた。手にはしっかりと傘を握っていた。一瞬、沈黙が流れ、お互いのびっくりした眼をみつめ合っていた。僕は何故、目の前にアラブ人の顔があるのか考え、おっさんはおっさんでザックに手を伸ばすべきかどうか、考えていた。眼を見合っていた時間は、どの位だろうか、僕は寝袋に入っていて手も出せないから、思いっきり口を開けると、「ワォー」と叫んだ。すると、おっさんおまん丸になった眼がさらにくわっと見開いて、びっくりして立ち上ると、土を蹴って、もの凄いスピードで傘を握って走り去った。砂漠が上る。傘を持っていくところが根性である。
 ヨーロッパのユースホステルでは、ただ泊りのヒッピーのプロが居るらしく、夜、店の親父が客を数えに行くと、一部屋に必ず二、三人は多い。「こら!」と怒鳴れば彼らも慣れたもので、さっ、と飛び起きると、開けておいた窓から忍者のように消えていく。この時、皆、それぞれ掛けておいた毛布をしっかりと握っていく、という。

 なんとかかんとか、 れ果てた道を辿り、サハラの砂風に吹かれ田舎のアラブ人に迷惑をかけ、進む。僕の姿は陽焼けと、埃で、さらに異様な姿となっていた。言葉は全く通じず、しばらく人と話してない。ガラスの無い窓から風に吹かれ、ずうーっと遠く、落陽で紅く染る地平線を眺める。会話のない淋しさか、一人、童謡を口ずさみ、故郷のガールフレンドの顔など思い出してみる。
「此処は地の果てアルジェリア……か、冷たいビールを飲みたいもんだ」
 マドリードのカフェー、泡を吹くビールが目の前をチラチラした。
「北上だ、北上!禁酒国はもう、ええ」
と、地図を広げると、鉄道が走っていた。
「こりゃ早い、汽車だ、汽車だ」
と、今度は西に進むべくバスを乗り継ぐ。目標は駅のある街、アバドラ。
 やっと辿り着いた駅のある街。
「ガーン!」と、勢い良くドアを蹴ると、昼寝をしていた駅員がびっくりして眼を覚す。
「時刻は?」
と、ニタニタしながら汽車が走る真似をして腕時計を指さすと、おっさんは、しばらく、きょとんとしていたが、意味を飲み込めたらしく、座り直すと、人さし指を一本立てて、横に振り
「オンリー、サンデー(日曜だけね)」
と言った。
 今日は確か、火曜日のはずだぞ、ぐらぐら、と頭にきた僕は
「何がオンリーサンデーだ、一週間に一度しか汽車が走らんかったら、砂でレールが埋まってしまうぞ、クソ、アラブ人め!」
と、日本語で怒鳴りちらした。何人と、いいかげんな国か!




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