このブログは一つの物語です。
そこで、中野の留守の間、たびたび登場する他の友人の話になる。
大田三郎、やはり僕らと同じ齢である。僕らの登山仲間、クラブには同じ齢がたまたま偶然寄って来たが、学生の頃の同窓生ではない。
三郎は同じ齢ではあるが、この仲間うちでは一番生まれた月が早いので、実際には一番年上ということになる。が、彼は非常に若ぶりで、なす事すべて若い。そして、少女趣味である。そこで僕はよく知りあいの女の娘らに「さぶちゃんは僕より齢上なんだぜ」と言うと、皆必ず「えっ!?うそぉー」と信じられぬ顔をして頭を伏せて滑り転げる。
それ程若ぶりである。しかし、若干僕が老け過ぎの傾向もあるようだが・・・。
三郎は三番目に生まれたから三郎と言い、それ以上の深い意味は俺にはない、と言って威張ったり嘆いたりしていた。
非常にさっぱりした諦めが良すぎる性格である。また、落ち着きのない性格でもあった。
彼は歯科技工師をしているのだが、よく、落ち着きのない男がああいう細かい仕事が出来るなぁと彼の職場の技工室を覗いてみると、頭にバンダナを巻き、ラジオを聴き、ガタガタ貧乏ゆすりをしながら入れ歯を作っている三郎が居た。足があれ程ガタガタして、どうして手が揺れないのか?と僕はいつも不思議に見ていた。
また、彼は祭りが大層好きである。ある時彼の勤める歯科医院の近くで、子供らが、チキリン、チキリンと太鼓と笛を鳴らして祭りの練習をしていた。ところが彼もチキリン、チキリンと身体を揺さぶりリズムをとりながら入れ歯を作っているものだから、何度も何度も失敗して「ちくしょう!」と次々と失敗した入れ歯をゴミ箱にほうりこんでいた。こうして祭りが終わる頃は、ヨレヨレになった三郎が居た。これを恐縮がった歯科医院の奥さんの好意で、その次の年からは町内の祭りに参加出来るようになったという話である。
彼は何度かヨーロッパ遠征をし、ついにこの歯科医院をやめてまで遠征に出掛け、名のある山郡の幾つかを登った。彼は落ち着きがないが、バランスの良い名クライマーである。
ある、天気の良い日、他の山岳会の人らと登攀することになり、僕と他の人、彼と他の人と言うふうに2パーティーで、僕と彼がトップ(先)に行き、他の二人をリードすることになった。なかなか難しいルート(登攀経路、道筋)で、ルート自体も入り組んで、ルートを探すのが難しかった。僕もだいぶん頭を悩ませながら冷や汗もんで登り、やっと困難な核心部を過ぎ「ほっ!」としたところで、後発パーティーの三郎が下から「おおーい、みつる!この樹からどっちに行くのかぁー?」と吹き上げる風とともに叫ぶ声が聞こえて来た。そこで僕が「そこは適当に行くんじゃー!」と上から叫ぶと「分かったぁー!」と下から声がした。僕とパーティーを組んでいた他の山岳会の人は、呆れた顔をして「大丈夫かなぁ・・・?」と下をながめていた。
そこで、中野の留守の間、たびたび登場する他の友人の話になる。
大田三郎、やはり僕らと同じ齢である。僕らの登山仲間、クラブには同じ齢がたまたま偶然寄って来たが、学生の頃の同窓生ではない。
三郎は同じ齢ではあるが、この仲間うちでは一番生まれた月が早いので、実際には一番年上ということになる。が、彼は非常に若ぶりで、なす事すべて若い。そして、少女趣味である。そこで僕はよく知りあいの女の娘らに「さぶちゃんは僕より齢上なんだぜ」と言うと、皆必ず「えっ!?うそぉー」と信じられぬ顔をして頭を伏せて滑り転げる。
それ程若ぶりである。しかし、若干僕が老け過ぎの傾向もあるようだが・・・。
三郎は三番目に生まれたから三郎と言い、それ以上の深い意味は俺にはない、と言って威張ったり嘆いたりしていた。
非常にさっぱりした諦めが良すぎる性格である。また、落ち着きのない性格でもあった。
彼は歯科技工師をしているのだが、よく、落ち着きのない男がああいう細かい仕事が出来るなぁと彼の職場の技工室を覗いてみると、頭にバンダナを巻き、ラジオを聴き、ガタガタ貧乏ゆすりをしながら入れ歯を作っている三郎が居た。足があれ程ガタガタして、どうして手が揺れないのか?と僕はいつも不思議に見ていた。
また、彼は祭りが大層好きである。ある時彼の勤める歯科医院の近くで、子供らが、チキリン、チキリンと太鼓と笛を鳴らして祭りの練習をしていた。ところが彼もチキリン、チキリンと身体を揺さぶりリズムをとりながら入れ歯を作っているものだから、何度も何度も失敗して「ちくしょう!」と次々と失敗した入れ歯をゴミ箱にほうりこんでいた。こうして祭りが終わる頃は、ヨレヨレになった三郎が居た。これを恐縮がった歯科医院の奥さんの好意で、その次の年からは町内の祭りに参加出来るようになったという話である。
彼は何度かヨーロッパ遠征をし、ついにこの歯科医院をやめてまで遠征に出掛け、名のある山郡の幾つかを登った。彼は落ち着きがないが、バランスの良い名クライマーである。
ある、天気の良い日、他の山岳会の人らと登攀することになり、僕と他の人、彼と他の人と言うふうに2パーティーで、僕と彼がトップ(先)に行き、他の二人をリードすることになった。なかなか難しいルート(登攀経路、道筋)で、ルート自体も入り組んで、ルートを探すのが難しかった。僕もだいぶん頭を悩ませながら冷や汗もんで登り、やっと困難な核心部を過ぎ「ほっ!」としたところで、後発パーティーの三郎が下から「おおーい、みつる!この樹からどっちに行くのかぁー?」と吹き上げる風とともに叫ぶ声が聞こえて来た。そこで僕が「そこは適当に行くんじゃー!」と上から叫ぶと「分かったぁー!」と下から声がした。僕とパーティーを組んでいた他の山岳会の人は、呆れた顔をして「大丈夫かなぁ・・・?」と下をながめていた。
本人が行き詰っているからルートを教えてやるのが本当だが・・・このすかさず、「分かったぁ!」と叫ぶところが三郎らしいところである。聞いた俺が馬鹿だった、と後で言っていたらしいが・・・僕は彼の技量なら、教えずとも登れると思ったから適当に言ったまでのことである。



