2012年9月26日水曜日

Gallery-5

花

生命の芽生え

どこまで行っても

一輪の花どもよ

アルプス

宇宙の空間

宇宙

高波の小船

宇宙の銀座



2012年9月21日金曜日

51今どき破天荒な男達の物語

このブログは一つの物語です。

初めての方は、1からお読み下さい。
今どき破天荒な男たちの物語の1 

 彼の言う通り、僕は何度か空を飛んだ事がある。一番長く飛んだのは十五メートルである。この時は、歯科技工師の三郎がパートナーだった。
 この日も、山小屋で他の山岳会の連中と夜遅くまで飲み、明け方、気分の悪いのに登攀を開始した。幾度も通い慣れた簡単な岩場であった。十五メートル程の壁を登り終え、両手を離して歩きだしたとたん、ズルッ、と足が砂利で滑り、岩をつかむ暇もなく、身体が流れ宙を舞った。連続的に青い空とグレーの壁とが交互に見え、列車の窓から見るように景色が高速で流れた。簡単な壁だからハーケンは取ってなく、ザイルはフニャフニャと流れ、“死”が一瞬のうちに見えた。加速がついて息が、ぐっ、と詰まりそうになった時、「バーン!」と三郎の目の前に叩きつけられた。三郎は目をまん丸にしていた。僕らを見ていた他の山岳会の人らは、握り飯を握ったまま口を開けていた。
奇跡的に助かったのである。背中から落ちて、ザックがクッション代わりとなり、金属(かね)の水筒がぺっちゃんこになっていた。命の恩人である。
 その後、ルートを創る時に、岩の割れ目に入れておいた登攀具が外れ、それに身体を預けていた僕は、コロコロと芋のように岩肌を転げていったことがあるが、その時はしっかりとハーケンで止まったが、あの“落ちる!”瞬間というものは実に気味悪いものである。また、落ちる時間は瞬間的なものだが非常に長く感ずるものである。
 僕はベッドで寝ているが、片足がベッドから落ちる瞬間に、瞬間的に夢を見るのだろうか?夢の中で岩登りをしていて、「あっ!落ちる」と、ぱぁーと落ちてゆき、足が、すこん、とすくわれ、「はっ!」として目を覚ますと、ベッドの端に片足がぶらぶらしているということがよくある。

 いずれにしても“落ちる”というのは、あまり気分の良いものでない。以前、オカルト好きの山下と二人でオートバイに跨って、宮崎の岩峰の、当時もっとも難しいとランクされるルートに挑みに行ったことがあるが、高度差五百メートルのこの大岩壁は屋根のようなオーバーハング(かぶさるように突き出ている岩壁)ばかりで、取り付きの遅かった僕らは暗くなってしまった。




Gallery-4

激 流

北の宿

着陸するUFO

飛ぶUFO

神々しい山

シャモニー針峰群

 闇夜に光る豚の鼻

ヨーロッパアルプス

友の山

ドリュー南西岩稜

前のページ 次のページ


2012年9月12日水曜日

50今どき破天荒な男達の物語

このブログは一つの物語です。

初めての方は、1からお読み下さい。
今どき破天荒な男たちの物語の1 

と電話器の傍で両手を上げて嘆いている義兄に、どうしたんだろう・・・?と姉が尋ねる。
「いやぁ・・・どうも、頭のおかしい人から電話があって・・・」
義兄は額の汗を拭いながら答えると子供らが、
「ああー アホや、アホや、クレイジーや!」
とはしゃいで箸で茶碗を叩く。
「これっ!」
と言って夫婦で子供らを叱りつけているところへ、また
「リーン!」
とベルが鳴る。姉が
「もう出なさんな!ほっといたらいいわ」
と言うが几帳面な義兄は
「いや、父兄だったら悪いから」
と言って、再び電話器へ向かう。子供らがおもしろがってついて来る。
「また変な人やったら、すぐ切りなさいよ!」
と姉が御飯を口に入れながら言っている。
「はい、こちら○○ですけれど、ご用件は何んでしょう?」
と、相手の先を突いて応対すると、再び
「ああ、○○さん、コカコーラは何処で買ってますか?」
と聞いてくる。よく聞いてみると声がしっかりしているので、まんざらクレイジーではなさそうだと思い、何処かと掛け間違っているのだと思い
「あの、こちらは英語の教室ですけれど・・・何処かと間違っていませんか?」
と、丁寧に応対してあげると、
「はい。私はフランス語が喋れます」
あっ!こりゃいかん、と思った義兄はガシャン!と受話器を置くと子供らに
「外は暑いから、明日からは帽子をかぶって外へでなさい!」
と言った。
この電話の相手は誰か、説明はいらぬであろうが、僕は義兄から
「昨日、変な電話が三回もあって、いやぁ世の中にはまだクレイジーが居るんやなぁ。ああいうのを野放しにしたらいかんなぁ」
という事を聞き
「うん、野放しにしたら、あかん」
と、力強く答えた。

 この弁当屋の職業病で大太りの中野を引っぱって、僕らは岩登りへ行くが彼はズルズルと滑りだし、ヨーロッパアルプスの数々の登攀記録の権威と誇りとを守ってか、その後、彼は
僕らとは一緒に山へ行こうとはしなかった。そして、弁当屋の前を通る体格の良い高校生らに
「兄ちゃん!良い身体しとるなぁ、何処の学校や?」
と自衛隊の勧誘員みたいな声を出して、若い人を集めていた。彼は密かに、山岳会を創ろうともくろんでいたのである。
 こうして彼は体格の良い高校生らと、弁当を買いに来る若い人達を集めて、南アルプスの剣(つるぎ)岳(だけ)のチンネというルートに登って来た。
「高校生ばかり連れて危なくないか?」
と僕が尋ねると
「わしゃ、あんたみたいに空を飛ばんぜ」
と、また憎たらしいことを言う。





2012年9月4日火曜日

49今どき破天荒な男達の物語

このブログは一つの物語です。

初めての方は、1からお読み下さい。
今どき破天荒な男たちの物語の1 

「ほんなら何?入れたらええんかい?」
「そうやなぁ、ファンタかポカリスエットやろ、それにコカコーラ、コーラはカフェインが入っとるから中毒になってまた飲みとうなるんや。ほれ、酒飲み北さんが、酒、酒とういのと同じ原理や。コーラを入れたら回転が良いぜ」
「でも、コカコーラボトラーズは一割しか引かんやろう。わし、コカコーラに電話して聞いたんやぜ」
「そんなこたぁないぜ。うちの姉さんとこの塾でクリスマスパーティーをする時に大量に買うが、三割は引いてくれてるみたいやぜ」
「ほんまかい!?」
「本当や。なんなら姉さん所に電話して聞いてみりゃいいよ」
「へえ・・・何処から仕入れてんのかなぁ・・・?」
と中野は腕組をして考え込んでいた。

 僕の姉は別府の街で“○○”という洒落た名の英語塾をしていた。先生が何人か居て義兄が経理をしていた。義兄というのはおとなしくて真面目な人で、うるさい姉とは全く性格が違う人である。両人とも、しばらくうちに居候していた中野をよく知っている。その子供が二人いる平和な家庭の夕食時に電話のベルが鳴った。
「リーン!」
「はい。こちらは○○でございます」
と、慌てて食べかけの食事を飲み込むと、義兄は営業用の語調で応対する。何時、父兄から電話があるか分からないのだ。
「ああ、そちらはゴリラのお兄さんとこですか?」
と、急に訳の分からない男の声がする。
ああ、暑い時はこいう人が出るなぁ、今日は特に暑かったからなぁ・・・と義兄は醒めたように受話器を、ガシャン、と置くと再び食卓へ向かう。
「どうしたの?」
と姉が尋ねると
「いや、間違い電話みたいだな」
と、子供の教育上嘘を言い、気の毒な人が居るものだと御飯を口に運ぶ。するとまた、
「リーン!」とベルが鳴る。
「はい、こちらは○○でございます」
「ああ、コカコーラは幾らで買ってますか?」
と、受話器の向こうから太い声が聞こえてくる。ああ・・・可哀そうに、まだ若そうなのに・・・と悲嘆して再び受話器を置く。
「どうしたの?誰なの?」