2015年9月30日水曜日

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅳ 象牙海岸の月-1)

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅳ 象牙海岸の月-1)


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 西アフリカは東と異なり、光も影も眩しく、空気が濃いせいであろうか、緑や人、海や空、すべてのが濃く原色に近く鮮やかである。黒人の色の黒さも、色のついたブラックである。
 海岸に着く漁船から、グロテスクな紫やブルーの怪魚を黒人の猟師らが下げて来る。水も魚もキラキラと光っている。
 コートジボアール。象牙海岸のこの国は、フランスの植民地から独立したばかりで、フランスの植民地にしては、他の国よりフランスに近いからだろうか、フランス風な洒落たところがある。シャンデリデ通りを真似た通りがある。が、ひとたび街を離れると、まさにアフリカであった。すべて光っていた。
 市場には、サラサ一枚の黒人らがワイワイ言ってたむろする。人々の輝くような白い歯が妙に印象的だ。活気にあふれる若い独立国である。海岸線には、ウェストコーストのような眩しい砂浜に白いホテルが並んでいた。
  この洒落た街に長らくの滞在となった僕は、見慣れてきた街並みをぶらぶらとし、カフェテラスでビールを飲んでいた。すると、花壇に囲まれた少し離れた席に、白人との混血らしい娘が目についた。なかなか、チャーミングな娘こであった。
「混血になると奇麗になるもんだなぁ、だいぶん黒人の血が薄くなっているからだろうか」

と、ぼんやり娘を見ていたら、しばらく目が合ったのか、その娘が、

と言って僕の隣の席に座って来た。手にオレンジジュースを持っていた。長いまつげの下から真黒いキュートな瞳をくるくると回し、ストローをいじくっていた。レースのカーデガンを肩に掛け、学生風の娘であった。英語で日本の事を教えてほしいなどと、言っていた。キョウトに行ってみたいなどとも言っていた。彼女が尋ねる事を教えてやると、彼女は熱心に聞き入っていた。
 彼女は父親がフランス人、母親がフランス人と黒人との混血だと言っていた。どうりで黒さが薄いはずだ。二十歳になる前といい、髪はアフリカ特有の縮れた髪を奇麗にまとめ、眼が大きく、クリクリとしていた。
 辺りが暗くなりかけた頃、その娘が
「知っている店がある、ダンスに行こう」
と、誘うので、別段、用のない僕は彼女に夜の街を案内してもらおうと、手を引かれるまま、ついて行った。

2015年9月28日月曜日

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅲ 素顔のアフリカ)

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅲ 素顔のアフリカ)


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  タンザニアの南にモザンビークという国がある。この国は非常に美しい海岸線をもっている。マダガスカル島に保護され、直接インド洋の外海に洗われないからか、キラキラと光る美しい砂浜の海岸線が何処までも連なっている。モザンビーク海峡のおとなしい海は深いグリーン一色で広がる。目の洗われる絶景である。
 この国の黒人は土着的で、アフリカの民族そのものである。混血も少なく、手足がひょろ長く、色は真っ黒で黒光りしていた。いまだ植民地が続き、フランスが統治しているこの国は、すべてが独立国に比べ遅れているようであった。白人の宮殿のような白壁の家ばかり目につき、街はヨーロッパ的で金髪の美しい娘らが楽しそうに歩いていた。黒人の姿は見えなかった。
黒人の顔は皆、同じような顔をしているように見えるが、見慣れてくると、種族種族でかなり違うのが分かってくる。また、同じ種族でも、女性なら女性で、美人、不美人の見分けがつくようになる。美人、不美人というのも、かなり私観が入ってくるが、それでも、顔型の整い方や、バランスなどで一般的な見分けはつくようになる。が、この国の黒人は、そういう事を考える以前の問題であった。それ程、彼らは人間に程遠い存在であった。いや、人間のルーツであるかもしれなかった。
 郊外の海岸や市場へ行くと、サラサ一枚をまとった裸足の黒人らが、長い手足を振って歩いていた。額が小さく、髪のちぢれあがった黒人の娘が、ファションであろうか、ちぢれた髪を三ツ組にして幾本も腰のところまで伸ばしていたが、細長い身体を折り曲げるようにして、長い手足を振りながら歩く姿は人間には見えなかった。宇宙人か、地底人か、SFXの画像を見ているような錯覚に襲われた。僕はポカーと口を開け、透き通る青空の下、グリーンの海をバックに砂浜をゆく、土人の娘らを何時までも見ていた。
 かすかに見えるマダガスカル島の住民は不思議な事に、この対岸の人種とは全く異なり、ジャワ人、インドネシア系である。大古、イカダに乗って貿易風に流され、インド洋をはるばる渡って来た人々の子孫が、今、こうして栄えているものと思われる。おもしろい事に、この島には地球上で絶滅した動物や、植物が今も健在であり、進化の過程も全く独自に進んでいるという。いや、新化が止っていたかもしれない。島全体が強いバリアーか、何かに包まれたこれも、また不思議な島である。
 東、南アフリカは美しく陽気な、どこか欧州を思わせる、良く整備された街である。そして、アラブ人、中国人ら、外国人の支配下の強い国であった。
 華僑の商魂と生活力には思わず感服してしまう。また、コカコーラのセールスマンにも同じく感服してしまう。おかげで食中毒にならずに済む、というものである。
 中国人、華僑というのは世界中、何処へ行っても居て、アフリカの奥地へ行っても、しっかり漢字の書いた店があり、「コカ・コーラ」と、言うと、これもまた、何処へ行ってもあり、ぬるい埃のかぶったコーラを、中国人のガキが差し出す。この太っちょのガキは小学生位なのに田中角栄みたいな顔をして、バチバチとソロバンを弾いていた。

2015年9月25日金曜日

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅱ.夢の島)

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅱ.夢の島)


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ワタの旅と冒険-1

 ダレ・サレームの街から見える範囲の所にザンジバルという島がある。日本の淡路島位の小さな島である。かつて、中世に自由の国を創ろうと有志が集って行った島である。中世ヨーロッパでは桃源郷のように言われ、アフリカで死んだ詩人のランボーが死ぬまで、「行きたい、行きたい」と、行っていた、夢の島である。人口数千人の小島であるが、ザンジバル共和国といって独立の国を創っていた。運良く僕の乗った船が、そのザンジバルに荷を降しに行く事になった。外国人の上陸は許可出来ぬらしいが、特別にエージェントに頼み上陸することにした。
 ザンジバルは噂どおりの島であった。まず、街中にありとあらゆる人種がいた。白人、アラブ人、黒人・・・と、ただ僕は見たかぎりでは東洋人はいないようであった。僕が歩いていたら、島の人達が火星人を見るような目で僕を見ていたから。
 
 街は、ヨーロッパとアラブ、アフリカをごっちゃにした建物が立ち並び、その建物のあい間に、キリスト教会、イスラム教会、その他、訳の分からん宗教の教会などが立っていた。あらゆる人種が、それぞれ勝手に自分たち流の家を建て、自分たちの宗教を信仰していた。あらゆる人種が自分たちの民族の暮らし方を保ち、宗教を保ちながら、見事に調和しあっていた。バベルの塔は崩れたが、この島は何人のいさかいもなく平和に続いていた。

 街は美しく、よく整備され、ヨーロッパにあるような公園やグラウンドもあり、そういうところで突然、アラブ人が礼拝していたりしていた。
 驚いたのは、夕方、ザンジバルの国歌が街中に備えつけられたスピーカーから、ミュージックサイレンで鳴り響く。すると、笑ったり、喋ったり、歩いていたりしていた街じゅうの人々が、ぴたっと止まって、じっと立っている。街全体が停止したように、しん、と静まる。国歌が鳴り終ると、再び人々は、ワァワァ言いながらもとの行動にかえり、遊んでいた子供らや、ベンチに座っていた人々が家路へと向う。小学校のグラウンドを思い出す光景である。

 
 この多種雑多の民族を統一しているものは何だろう?宗教、イデオロギーを越えた、強烈なパワーが存在しているように思えた。そういえば、この国の人が働いているのをあまり見かけない。大人も子供も皆、平和そうな顔をしてブラブラしているだけである。こんな小さな島でどんな産業で大勢の人々が暮らしているのだろうか、いろいろ考えると不思議な事ばかりである。

 人通りも少なくなり、だんだん気味悪くなった僕は、薄暗くなりかけた道を港へと向った。
 謎に包まれた国、ザンジバル。アラビアンナイトの魔法にかかって、幻想を見ているような、中世の時代にタイムスリップしたような、なにもかもが白いベールに包まれた魅惑の島である。

2015年9月23日水曜日

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅰ.ブラック大陸5)

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅰ.ブラック大陸5)


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ワタの旅と冒険-1




情けないのと、痛いのとで、身体がぐてーっとなり、背中にびっしょり汗をかいていた。

「オッケー(良か!)」
と、おっさんは人の気も知らず、何事もなかったように呟くと、「マネー(金くれ)」と、手を出した。
 言われるままに金を払い、出血する歯ぐきを押さえながらビルを出る。四十度はあろう、もわーとする陽の中、脳全体がドクッドクッと脈を打ち唇の両脇から血が流れた。
「ああ、何故?こんなひどい目に合わなきゃならんのか・・・・・・俺が一体、何をしたっていうんだ・・・・・・」
と、顎を押さえ、真黒い地面に血を吐きながら、ギョッ、と振り返る黒人を背に陽の照るダレ・サレームの街を一人歩いて行った。


2015年9月21日月曜日

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅰ.ブラック大陸4)

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅰ.ブラック大陸4)


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ワタの旅と冒険-1



「ユーアー、ツーリスト?(あんた、旅人かい?)」
と尋ねるので、
「イエス(そん通りや)」
と、答え、何日か通って来れると言おうとしたが、おっさんは
「ウムウム」
と頷いて口の中を覗く。すると、突然、大きなペンチのようなものを握り、虫歯のある奥の歯を、ぐっ、と挟むと、グリグリと揺さぶりだした。突然のあまりの痛さにびっくりした僕は「どうした?何がどうなった?」と考える暇もなく、脳神経にキリキリと鋭い痛みが走った。
「うわぁー」
もの凄い痛みに喉元から声を張りあげるが、おっさんは、さらにグリグリ歯をねじ回すと、今夜は歯を引っぱりだした。表面が虫歯になっているだけのしっかりとしたエナメルのデカイ歯である。そう簡単にぬけるものではない。まして麻酔なしである。
「ぐうー」
悲痛の声をあげる。口から頭蓋骨がスポッとぬけるんじゃないか?と思い、頭蓋骨がぬけ出た後のフニャフニャのゴム面みたいになった自分の顔が浮んだ。眼の前のおっさんの黒く太い腕は力を入れ込み、筋肉が盛り上っていた。眼がくらくらとして、眼の前がかすみだした頃、
「バチッ」
と、にぶい音がして、僕が幼い頃より大事に育ててきたピカピカの立派な白い歯が、カランカランと汚い金属(かね)の皿の上に投げ捨てられた。
 あまりの痛さに眼に涙が溜り、口からはドクドクとネバネバした濃い血が流れだした。結核患者のように口から血を流しながら、窓ガラスより透けて見える街の光景に目をやると土人がのんびりと歩いていた。
「ひどい目にあった・・・・・・」

2015年9月18日金曜日

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅰ.ブラック大陸3)

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅰ.ブラック大陸3)


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ワタの旅と冒険-1


 と、言うと、ポン引きはしばらく、「ウムー」と考えているが、さすがに諦めて帰る。
買い物をする時も必ず高くふっかける。値切ると半分は安くなる。 そのケニアに比べ、此処の黒人はよく働く。中国から支援に来ているのか、人民服を着た中国人と一緒に鉄道の線路を敷いていた。 イデオロギーぬきにタンザニアの国が好きである。とは言っても、土人にイデオロギーは関係なさそうだが・・・・・・。 このタンザニア、白人の影響が少ないのは良ろしいが、文化、医療の面では多少遅れているところがあるらしい。

 ダレサレームに入港中、突然、歯痛がしだした。痛み止めを飲んでみるが、さっぱりしない。早くこの痛みから解放されようと、しょうがなく黒人に聞きながら、街の歯科医を訪ねる。歯科医院は街に何軒しかなく、むろん日本のように看板などをベタベタ貼ってはない。地図を握って裏道へ入り、狭い入りくんだ路地を抜けると、汚いビルの二階が診療所になっていた。「ギィー」とドアを開けると、ガラーンとした部屋に椅子が一台あるだけの薄暗い部屋である。
「おかしいなぁ?床屋か、何処かと間違ったのかなぁ?」
歯科医院、独特の機械や、エタノールの匂いもない。
「おかしいなぁ・・・・・・?」
と、中を覗いていたら、奥から黒光りのするプロレスラーのような大男が出てきた。この恐ろしいおっさんは可愛いエプロンをしていた。
「パアズン?(何か用かい?)」
と、聞くので、歯を押さえて顔をしかめると
「ウム、ウム」
と、おっさんは頷いて椅子に座れ、という。そして、椅子に座って一言、

2015年9月16日水曜日

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅰ.ブラック大陸2)

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅰ.ブラック大陸2)


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 最近、象の密猟が多いという。南アフリカのダーバンの街では、象牙は国外持ち出し禁止である。象牙の密猟が非常の多く、象牙の価格相場を下げるからである。それを承知で、黒人に教えられ薄暗い路地を入り、狭い螺旋階段を登って行くと、広い部屋があり、白人が居た。何と!そこは血のついた象牙の山であった。大きいものは直径一メートル以上もあり、長過ぎて曲りくねり、マンモスの牙のようであった。
 ダレサレームの街は、幾度も訪れた懐かしい街である。植民地時代を偲ぶ、ヨーロッパの雰囲気のする、ゆったりとした街である。街も道路もよく整備されて美しく、枝葉が空を覆う、大きな幹を持つ樹木の立ち並ぶ緑に恵まれた街である。
 僕は直径三十センチ長さ一メートル位のを買ったが、二万円程であった。安い。こうして密売で買った象牙を税関の眼を盗み、船に持ち帰ると、他の乗組員らは、あまりの安さにびっくりしていた。彼らは航海中、この象牙を一生懸命削って磨くわけだが、ある男は下船の時、沖に停泊していた船のタラップからピカピカに磨きあげた象牙を落してしまったが、何百年か後、横浜湾のそこを浚さらったら、象牙が出てきて、大騒ぎするだろう。
 独立して社会主義国になっているからか、大きな学校、役所が多く治安も良い。隣のケニ
アとはえらい違いである。ケニアのモンバサの街を歩くと、ポン引きらがまとわりついて離れない。
「マスター、マスター、ホワイト、ブラック、チャイナ、アラビアン!(旦那、旦那、白黒、中国、アラブ人!)」
と、種族の名を言い、「何人がいいか?何人でも居るよ!」と言う。あんまりうるさいので、
「ジャパニーズはいるか?俺りゃジャパニーズじゃなきゃ駄目なんだ!」

2015年9月14日月曜日

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅰ.ブラック大陸1)

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅰ.ブラック大陸1)


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アフリカは熱く僕を迎えてくれた。モンバサの街へ降りると、
「サバ!サバ ビアーン」
「こんにちは!いかがですか」
と、マサイ族の子供らが声をかける。暑い。四十度は越す暑さでジリジリとくる。樹木の影を選んで歩かなければ……灼熱地獄だ。
 黒人の手や足が白いのは、あまり知られていないが、実際に白い。長い間の気候のせいで肌が黒くなったものと、思われる。この暑さのせいであろう。また、彼らは手足が異様に長い。歩く時に、まず踵を降ろし、次に足の平、全体を降ろすもんだから土煙が、ぼわーと立つ。それでなくても舗装してない道が多いのに、よけい堪らない。車が走った後は、しばらく前が見えなくなる。
 アフリカの黒人は非常に立派な体格をして胸が張っている。レスラーのような肉体である。が、彼らはたいそう気が弱い。長い間の植民地生活のせいであろうか、気弱である。特にアフリカは香港映画が流行っているので、僕らのような東洋人は皆、拳法の達人のように思っているらしく、
「ワッ!」
と叫ぶと、黒光りをした大男が、
「ドキッ!」
と、大きい身体を震わせたりする。
 ケニアからタンザニアへと入り、アフリカンパークへと車を進める。草原の中、ガタガタ道を走り、パークへと向う。車といっても普通のライトバン、パークといっても無装備、無法地帯の草原とジャングルである。
 丘へ登り、崖の上から眺めると、少年の頃テレビで見たジャングル大帝のアフリカの光景が、そこ、にあった。濃緑の深々としたジャングル、その合間をぬって河が蛇のようにくねり流れ、その後方に線のない荒々とした峰々が聳え、縮れ雲が何処までも連なっている。アフリカの姿、そのものであった。キリンが走る、地平線に蜃気楼が浮かびキリンの首が走り、後で胴体が追いかけて行く。草原の中、空気が揺らめき、乾ききった土の上を車が走る。ライオンもぐったりとして眼さえ開けない。象の姿は見えなかった。

2015年9月11日金曜日

ハ レ ル ヤ ー

はれるやーの親戚の親父が訪れて
俺のムスメを知らないか
なんのことなく家を出て
歌手じゃスターだと言い張って
もう半年も帰らぬえ
そりゃ器量はママに似て
いいおなごじゃけんど
何をしでかすか分かりゃせん
気性は俺にそっくりだ
そりゃそりゃ困ったもんだと
親父と一緒に
何処やら此処やら探してみるが
何処へ行っても見当らぬ
そのうち帰って来るだろうと
  
寝ころんでテレビを見てると
あい その娘(こ)
ほんとにスターになりおって
大股広げて
あい あれまー
気づけばビデオを見てたのか
これじゃ親父になにも言えん
困ったもんだと考えて
煙草を吸ったりお茶を飲んだり
しかし いいケツ
いい おなごじゃ
しだいに深い心配が
深い快感へと つながって
よくやるムスメじゃと感心する

その後 親父に会った時

この間 偶然ムスメさんを見つけましたと
言えば親父が喜んで
それは それはありがとう
何処で見たかと しつこく聞かれ
いやあ テレビでつい見かけまして
とても キレイになっていて
唾が 唾がと言いかけたら
そりゃ嬉しい いつ見れる
親父はしゃいで手を叩く
不幸な親父は何も知ず
朝から晩までテレビを見
ムスメやムスメやとロ鳴らす
チャンネル回せど娘は出ず
おかしいなおかしいな
何処のテレビに出てたのか
しつこく尋ねて帰らない
  
しょうがないので押し入れの
数々重なるコレクション
百や二百じゃことたりぬ
中からようやく見つけ出し
これですこれです
しかしまあ 見ては因ります
困ります
そうは言っても親父のことで
俺の腕からもぎ取って
まあまあ いいじゃないか
後で焼酎でも持ってくる
ニコニコしてはビデオをつけ
ムスメの姿に期待する
期待されてるムスメの方は
赤や黄色の文字の後
プリンと出したオツパイを

ゆらゆらさせて胸さすり
ハハーンやウフーンと息もらし
足を広げて御開帳
シグナル響き故郷(ふるさと)の
歌が聞こえて陽が暮れて
親父は黙って立ち上がり
ものも言わずに部屋を出る
夜風に星が眩しくて
泣くに泣けない親父の気持
口笛吹いて帰る背に
撮らす想いはただひとつ
「ママと形はいっしょじゃな」
月が星と合わさって
頭揺らせば またひとつ
はれるやーの歌が出る

2015年9月9日水曜日

going

何にかをこうして
焦る焦る
何かにこうして
追いかけられ
足はからみ手は震え
急げ急げ
くるくるくる
頭が回り眼が回り
バチバチバチバチ
花火が飛ぶや気も飛びまくる
やれやれやれやれ
あれもやれ これもやれ
陽のあるうちに
生きとるうちに
  
何からなにまで
かにから何まで
やれ やれ やれ
地球は広く
陽も長い
知覚も味覚も
どん欲に
舌が舌が もつれもつれ
なんだかんだと
短い世なら
たまたま偶然
生まれて来たなりゃ
元を取らなきゃ
あれやらこれやら
あれやらこれやら

2015年9月7日月曜日

ア  ク  ト

背中に光る陽
薔薇の花
どうでもいいカウンターの
隅。
過去を背負った男は
流行らぬ。
スクーターに乗った
スーパースターは
時代遅れ。

  あいや、椅子を蹴り上げ
  立ち上がる。

眼は星、
 ロに火山。
動き出した一瞬の
緊張。
一瞬の動き。
  やあやあ
  出発の合図じゃ合図じゃ
  鐘を鳴らせ
  のろしを上げろ。
  行(ゆ)けや行(ゆ)け

ばんばんの勢い
ばりばりの気。


2015年9月4日金曜日

フ ァ ン ク シ ョ ン

あらゆる
一瞬の油断が
目の前を
飛びかう
おいそれと
転けてはいられぬ
おっと どっこいの
社会人
気を引き締めては
顎を張る
目指すはドル箱
動くは株式
素早い動きに合わせ
早よう早よう気を急(せ)かす
    廻るな時計
  動くな敵陣
 呼べよ好運

走れや おっさん


2015年9月2日水曜日

ひ  ん

騒ぎまくった後に
汗が出るのは気のせいか
叫んだ時に

あわわわ・・・と
       
酸素が減ってゆくのは 何事か
もう どうしょうもない時代が
終り
どうどうもいい時代が
始まった

朝から塩辛で版が食えるか
屁をこく女とセックスできるか
何から何まで朝から晩まで
ガキからジジまで
いつもの調子で鼻をかむな

ようよう 希望を持つことが大切だ
ようよう ひらきなおることも大切だ
やあやあ舟に帆を掲げ
南やら北やら風まかせ
転んでみたって血が出るだけだ
なにがなんでも
たいしたこっちやねえ
なにから やあー
  かにから あわー
もうもうもうもう

  どうしても どうしても