2011年11月24日木曜日

23今どき破天荒な男たちの物語

このブログは一つの物語です。

初めての方は、1からお読み下さい。
今どき破天荒な男たちの物語の1 


 彼は、僕ら山仲間には珍しくパチンコや麻雀をする男で、山や特有の神秘性や抽象的な会話を嫌い、僕らが話しをしている時はいつも貧乏ゆすりをしながらマンガを見ていた。
 この抽象性、神秘性のかけらもない三郎と夜間登山を終え、由布岳の頂上で朝食を食おうとした午前五時二十分、僕らの目前にオレンジ色に輝く発光体が現れた。皿を逆さにしたきれいな円盤型で、内から炭が燃えているような強弱のあるオレンジ色を発光していた。こちらから見ると両腕を広げた位の大きさで、かなり前方の空に浮いていた。「うむ・・・?」僕は握り飯を食いながら、突然目の前に現れたこの現象をどう理解して良いものか分からず、「おい!あれはなんじゃ?」と三郎に尋ねる。すると三郎は握り飯をむしゃむしゃ食いながら「ありゃおめぇ、UFOじゃねえか、UFOに決まっとる!」と、さも当然に半ば自棄(やけ)気味に答える。そして素早く「でも俺りゃ信じねえぞ!」と断言した。


「うむ・・・・・」僕は唸りながら身動きがとれずどうして良いものか?と悩む。頭脳がまだついて行かぬようであった。すると、絶対信じないと断言した三郎が慌てて「カメラ、カメラ」とザックをひっくり返してカメラを探していた。そして彼は、「ちぇっ!こんな時にカメラを忘れてきやがった」と舌打ちすると「おい、どうしようか?」と僕に尋ねる。どうするもなにも、眼の前の円盤は僕らを監視するようにじぃーと停止して、僕らは身動きがとれない。背中にゾクッとしたものが走る。何分かこうした睨み合いが続くと、何を血迷ったか三郎が突然、「おーい!俺を乗せてくれ!」と急に叫んで立ち上がり、帽子を握って振り出した。「はっ!」連れていかれる・・・と、一瞬のうちに思った僕は「やめろ!やめろ!」と彼を押さえつけようとする。と、突然、停止していた円盤が、ぱっ、と米粒位に小さくなった、かと思ったら、さっ、と消えた。後には陽が昇ったばかりの透き通るようなコバルトブルーの空が広がっていた。

 一瞬の出来事であった。が、長い時間の経過が感じられた。この日のUFOは目撃者が多く、東京でパトカーがしばらく追跡したとも、翌日の新聞にのっていた。今にして思えば、あの時UFOに乗って行ってたら、さぞかしおもしろい世界が待っていたかも知れないのに・・・?残念なことをした。

 このUFOの目撃に感激した僕はさっそく友人らに話に行く。なにより真実味が高いのは、同じ目撃者が超現実主義の三郎ということであった。
 まず、喜ぶであろうはオカルト好きの山下であった。彼は神秘性を絵に画いたような男で、家にはそのたぐいの本でびっしりである。さらに彼の変わっているのは、いろいろな宗教を転々とすることで、仕舞いには自分の宗教を創らないと気が済まないようであった。彼も僕らと同年代のクライマーであったが彼は宗教遍歴の間、その空白期に観念がどうかなるのか?また、凄いパワーが出るのか?素晴らしい登攀をする。不思議な力を持つ男である。
 彼は小さな喫茶店をしていたがUFOが大変に好きで、店が終わると「今日は出そうだから」と言ってオートバイに跨(またが)りバタバタバタと月を背に一人山の方へ向かって走っていた。その彼の店“スイス・シャレー”に下山後さっそく三郎と駆けつけ「おい!出たぞ、UFOが出たぞ」と僕が興奮気味に叫ぶと、彼はうつむいてコーヒーカップを洗いながら、こめかみあたりをピクピクと震わせると「何処で出たの?」と平静を装い、小声で尋ねる。
「由布岳の頂上から見た!」
「どっちの方向?」
「海の方向や」
「それなら十文字原の上空だな」
「そうかな・・・」
と僕が答えると、彼はチャプチャプとコーヒーカップを洗い続けながら下をうつむき
「ああ、あそこはよう出るんよ」
と何事もなかったように答え、キュッキュッとカップを拭きながら棚に直し込む。その横顔の目はキラキラと輝いていた。






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