五.アラスカの夏-1
このブログは一つの物語です。
初めての方は、1からお読み下さい。
アラスカの夏は暖かく、半袖でも充分である。フィヨルドの田舎の岩壁。船がやっと一艘、着くぐらいである。
初めての方は、1からお読み下さい。
若い金髪のねえちゃんが、ヘルメットをかぶり、ジーンズのつなぎを着て、カッコ良くブルドーザーを動かす。産業が少なく、人口も少ないので、人々はあらゆる仕事についている。港の近くにはサケの缶詰向上があり、若い工員らがラフな格好をして働いていた。
この付近はサケの宝庫で、三十センチはあるサーモンが幾らでも釣れる。道を歩いていたら小学生ぐらいの子供が橋の上からサーモンを釣り上げては河に戻していた。贅沢な釣りをするもんだ、と橋の下を眺めてみると、浅い河にサーモンが重なり、きらめいていた。日本の釣りファンが見たら、眼に涙を浮かべる光景である。子供に竿を借りて釣ってみると、三十センチはあろうピチピチしたサーモンが幾匹も上った。
しばらく、休憩がとれたのでカメラを下げてブラブラと歩いてゆく。すると、
「ヤッホー」
と、車が止まり、車高の高いバンの車の窓から若い男女四人が顔を出して、
「ジャパニーズ、乗れ 乗れ」
と、手を振る。
何処へ行くのか知らぬが、時間は充分にある。何処へでも行ってやろうじゃねえか、と車に乗り込む。彼らも休暇でこれから遊びに行くと言う。四人とも僕と同じ歳ぐらいで男は髭を蓄えていた。後ろの座席から三リットルはあろうワインのビンが廻って来た。「飲め飲め」と言うのだ。「まさか?」と思ったが、運転手も片手ハンドルでビンを握るとガブガブと口に流し込んでいた。
大昔、氷河が磨ったであろう、切り立った河岸の曲りくねった道を車が走る。ガードレールなどはない。運転手が酔っぱらってきた。だんだん後ろを向いて大声を張り上げたり、ハンドルをぐらぐら揺らしたり、車を蛇行させながら運転しだし、とうとう飲みほしたワインのビンを窓から投げ捨てると、ガシャン、と後ろの方で音がする。