このブログは一つの物語です。
彼は登攀技量はあるが、そのさっぱりし過ぎる諦めの良さで一緒に登攀をしていて戸惑うことがある。彼がトップで登っていて、ちょっと握っている岩がバキッ、と欠けたり、ハーケンの数がたりなくなったりするとすぐ、「おい、帰るぞ!」と言いスルスルと上から降りてくる。雪山でサァーッと吹雪に巻かれると、「おい、駄目だ、帰るぞ!」と諦めが良い。彼には中野の粘着的性格を少し分けてもらう必要があった。が、用心深いのや臆病というわけでもなかった。ただ、めんどくさいことが嫌いなだけであった。実際彼は非常に度胸が良く、無茶をしながらどんどん登攀を続けた。よく、今まで生きていたと思われる程である。
そう言えばヨーロッパのキャンプ場の日本人で彼より無茶苦茶をする度胸の良い男が居た。ある難しい岩峰のルートは、クラック(岩の割れ目)を使って登っていくルートなのだが、丁度その頃、寒波が来てクラックの中には雪や氷がびっしり詰まっていて、クラックに手を突っ込んで登れなかった。が、その男は登攀に行くと言う。
「やめた方がいい、クラックには雪氷が詰まっていて登れない」と皆んなで止めるが「いや、手を突っ込んで雪や氷をかき分けて登って行く」と言うので、皆んなが「そんな無茶な!指が凍傷になってしまう」と叫ぶとその男は、落ち着いた口調で「あのなぁ、指の一本や二本、切り落とさんで山なんか登れると思えるかい」と言った。彼の目は座っていた。もう誰も彼を引き止めはしなかった。世の中には度胸がある、というか恐ろしい男もいるものである。
この男のように一人で死にに行く人間は別として、登攀を行うときは大抵、最低二人のパーティーを組んで登って行く。難しい箇所などはザイルに鈴なりとなることもあるが、二人の方がザイル操作も簡単でスピードアップ出来ることもあって、大抵二人パーティーで何組か組むことになる。
この場合、トップの先導者が両手両足を使って岩を攀じって行くのだが、安全ベルトにつながったザイルをハーケンの輪っぱに掛けてゆく。ハーケンは釘のようなもので、岩の割れ目に打ち込んでゆくのだが、既存のルートでは岩肌に打たれてある。もし墜落した場合、岩肌にしっかりと打たれたハーケンにザイルがひっかかり、ザイルにくくられた身体が止まるという仕組みで、難しい箇所には多く、易しい箇所には少なく打つ。または打ってある。
トップ(先導者)が墜落した時、ショックは大きく、セカンド(二番手)はしっかりとザイルを握りしめ、トップの墜落を阻止する。この場合、彼を憎んでなければの話だが・・・。
トップが無事、四十メートル、ザイルが伸びきるまで登ると、次にセカンドが登るのだがこの場合、ロープを握って登ると思っている人が多いが、それはリポビタンDのコマーシャルの話だけのことであって、実際はトップと同じように、両手両足で岩をつかんで登って行く。ただ、この場合、トップと違うのは墜落した時、トップの場合、ハーケンとハーケンの距離の分だけ墜落距離があるがセカンドの場合、トップがすかさずザイルを握るのでセカンドは身体が、ずる(・・)、ぐらいで済む。
このように同じ登攀をするのにもトップの方が危険性が高く、またルートを探す、というふうに頭もかなり使うが、緊張感、冒険心は満たされることになる。
彼は登攀技量はあるが、そのさっぱりし過ぎる諦めの良さで一緒に登攀をしていて戸惑うことがある。彼がトップで登っていて、ちょっと握っている岩がバキッ、と欠けたり、ハーケンの数がたりなくなったりするとすぐ、「おい、帰るぞ!」と言いスルスルと上から降りてくる。雪山でサァーッと吹雪に巻かれると、「おい、駄目だ、帰るぞ!」と諦めが良い。彼には中野の粘着的性格を少し分けてもらう必要があった。が、用心深いのや臆病というわけでもなかった。ただ、めんどくさいことが嫌いなだけであった。実際彼は非常に度胸が良く、無茶をしながらどんどん登攀を続けた。よく、今まで生きていたと思われる程である。
そう言えばヨーロッパのキャンプ場の日本人で彼より無茶苦茶をする度胸の良い男が居た。ある難しい岩峰のルートは、クラック(岩の割れ目)を使って登っていくルートなのだが、丁度その頃、寒波が来てクラックの中には雪や氷がびっしり詰まっていて、クラックに手を突っ込んで登れなかった。が、その男は登攀に行くと言う。
「やめた方がいい、クラックには雪氷が詰まっていて登れない」と皆んなで止めるが「いや、手を突っ込んで雪や氷をかき分けて登って行く」と言うので、皆んなが「そんな無茶な!指が凍傷になってしまう」と叫ぶとその男は、落ち着いた口調で「あのなぁ、指の一本や二本、切り落とさんで山なんか登れると思えるかい」と言った。彼の目は座っていた。もう誰も彼を引き止めはしなかった。世の中には度胸がある、というか恐ろしい男もいるものである。
この男のように一人で死にに行く人間は別として、登攀を行うときは大抵、最低二人のパーティーを組んで登って行く。難しい箇所などはザイルに鈴なりとなることもあるが、二人の方がザイル操作も簡単でスピードアップ出来ることもあって、大抵二人パーティーで何組か組むことになる。
この場合、トップの先導者が両手両足を使って岩を攀じって行くのだが、安全ベルトにつながったザイルをハーケンの輪っぱに掛けてゆく。ハーケンは釘のようなもので、岩の割れ目に打ち込んでゆくのだが、既存のルートでは岩肌に打たれてある。もし墜落した場合、岩肌にしっかりと打たれたハーケンにザイルがひっかかり、ザイルにくくられた身体が止まるという仕組みで、難しい箇所には多く、易しい箇所には少なく打つ。または打ってある。
トップ(先導者)が墜落した時、ショックは大きく、セカンド(二番手)はしっかりとザイルを握りしめ、トップの墜落を阻止する。この場合、彼を憎んでなければの話だが・・・。
トップが無事、四十メートル、ザイルが伸びきるまで登ると、次にセカンドが登るのだがこの場合、ロープを握って登ると思っている人が多いが、それはリポビタンDのコマーシャルの話だけのことであって、実際はトップと同じように、両手両足で岩をつかんで登って行く。ただ、この場合、トップと違うのは墜落した時、トップの場合、ハーケンとハーケンの距離の分だけ墜落距離があるがセカンドの場合、トップがすかさずザイルを握るのでセカンドは身体が、ずる(・・)、ぐらいで済む。
このように同じ登攀をするのにもトップの方が危険性が高く、またルートを探す、というふうに頭もかなり使うが、緊張感、冒険心は満たされることになる。

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