が、今回は爆竹をならすわけにはいかない。彼らの視線を外し、澄して歩いて行く。砂煙がいやらしい。
すると、彼らの方から、猿人の若い男が、「ワダ!ワダ!」
と叫び、駆けて来た。俺の名を呼びながら駆けて来た。一瞬、全身に水をかぶったような寒気が襲い、
「何故?俺の名を呼びながら駆けて来るのか?俺りゃ、猿人なんぞに知り合いは居ないぞ!」
と、突然の気味悪さと、不思議さとで、何が何だか分らなくなり、慌てて駆け出す。
後ろを振り向くと、男がさらに追い駆けて来る。慌てて後ろを振り向き、振り向きながら何が何だかわからず、とにかく駆ける。砂塵が舞う。
幾らか走ると、後ろの男も諦めたか、歩行を緩め、止ったが、僕はまるでミステリーゾーンの世界にでも迷い込んだように気味悪くなった。
あの時、猿人が叫んだ「ワダ!」という言葉は、本当に僕の名を呼んだのか、それとも原地語に何か意味のある言葉があるのだろか、訳の分からぬ事ばかり起る、島の太陽は幾つも霞み、砂風ばかり吹きまくっていた。
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