十.韓国編-Ⅰ人々の中で-1
このブログは一つの物語です。
初めての方は、1からお読み下さい。
韓国の下町の風景が好きである。寒々とした中、着膨れした年寄りが立ち、子供らが元気良く遊ぶ。夕方ともなれば、各家々が七輪を出して家の前でバタバタと扇ぎ、街は靄が掛かったようにぼやける。土塀造りの家々がうっすらとベールに包まれる。瓦(かわら)瓦(がわら)の屋根が見え、コートの襟を立てて労働者が家路へと急ぐ。何か、ざわざわとした人間臭さを感じさせる街である。
初めての方は、1からお読み下さい。
僕は良く仁川の下町をうろうろとした。下町の雰囲気が好きなのだ。この国ばかりは顔立ちが似ているので、じろじろ人に見られたりする事もなく、何処へでも歩いて行けた。何も喋らなきゃ分らないし、格好ももともとリッチじゃない。
それでも交番の前を通りかかると何処からか、ひょい、と手が伸びてきて、襟首をひっつかまえられ、交番の中へ引きずり込まれる。警官が早口の韓国語でベラベラと怒鳴りちらすが、向うは僕が分かる、と思って喋っているのだろうが、僕には雑音にしか聞こえなかった。
身分証明書を見せると透かして見ていたが、何も処分はされなかった。迷惑な話である。韓国では長髪が禁止なのだ。それが容疑らしいが、中学校じゃないぜ、ほんまに。
僕は骨董品が大変好きで、韓国での骨董屋廻りを楽しみにしていた。偽物が多かったが、忠実(まめ)に歩けば戦争のどさくさに中国から渡って来た掘り出しものがあった。が、良い品物を見つけても値切るのが大変で、店の親父と知恵比べとなり、何度も騙されかかって、「こりゃアラブ人と変わらんわい」と、ますます韓国人に警戒心を増すようになった。
骨董品ではないが、既製の品物はコピーが多く、ズボンを買ったらチャックにはYYKと書いてあり、スポーツウェアを買えばアダダスと英語で書かれてあった。実に紛らわしい。
登山用具店を見つけたので、羽毛服を買うと、鶏の毛みたいなものが入っていた。ハーケンやザイルも買ったが怖くて使ってない。
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