2015年12月28日月曜日

十.韓国編-Ⅱ凍る河-2

十.韓国編-Ⅱ凍る河-2

このブログは一つの物語です。

初めての方は、1からお読み下さい。


 また、この国の女性らはたいそう男性を大事にする。部屋へ上る時は、靴下を脱がせ、湯で足の指一本一本を丁寧に洗ってくれ、どんな用事を言いつけても「はい、はい」と、よく言う事を聞く。
 床屋へ行けば、親父が散髪する間。若い娘らが両脇から手や足の指の爪を切ってくれ、それが終ると右から、左から腕や足を持ってマッサージしてくれる。これで三百円ぐらいだから何度も行きたくなるのも人情というものである。
 こうして僕はセンスのない親父に刈り上げにされながらも幾度も床屋ののれんをくぐり、完璧な刈り上げになって街や郊外へとカメラを下げて歩き廻った。
 ある日、街よりかなり離れた所で、索漠とした風景の良い所があった。
「うむ、いい景色だ」
と言いながらカメラのシャッターをさかんに押していると、ファインダーの中に人が走って来る。
「ん?」
と目を上げると、カーキ色の軍服を着た兵隊が、タッタッと走って来る。
「しまった!此処は軍事場か」
と、思うが、もう遅い。
 息を切らして駆けて来た兵隊にすっかり周りを取り囲まれてしまった。皆、真四角の顔をして目がつり上がっている。彼らが韓国語で「ワワワワ」と唾気を飛ばしながら叫ぶが何を言っているのか、さっぱり分らん。彼らは僕が言葉が分かると思っているのだ。首を傾げて「わからない」と両手をあげてジェスチャーすると、小柄な男が人をかき分けて来て、
「キャニュー スピーク イングリッシュ?(英語、分かりますか?)」
と言ってきたので、これで助かる、と思った僕は力強く、
「イエス!」
と答えるが反応がない。彼の知っている英語はそれだけだったのである。慌てて、サイフから証明書を取り出して見せると、一人が見て、その隣の奴に手渡す。そいつがまた、隣に手渡していたが、日本語と英語で書かれたものを彼らが分かるはずはなかった。後(あと)、何枚かの証明書を見せるが、皆、納得しない。僕を睨みつけている。
 僕はだんだん冷や汗が出てきた。

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