2015年12月11日金曜日

十.韓国編-Ⅰ人々の中で-4

十.韓国編-Ⅰ人々の中で-4


このブログは一つの物語です。


初めての方は、1からお読み下さい。


それを、二、三度繰り返すとゲイトには誰も居なくなった。誰も居なくなったゲイトを、ポケットに手を突っ込んで口笛を吹きながら歩く。
「いやぁ、さっぱりした、さっぱりした。」
と、僕はご機嫌である。しょっぴかれた奴らは当分は出れまい。その頃には俺の船も港を出るだろう。「やっぱり俺は頭がいい」と髭を撫でながら歩いていると、今度は女が直接営業に出やがった。
 少し歳をくった痩せた女だった。長いショールを頭からかぶり、薄いカーディガンを胸元でかき合わせているのが、寒々しさをそそった。
 僕はやはり知らぬ顔をしてスタスタと歩いてゆく。小雪の舞う寒い日だった。河はまだ凍ってはいなかった。
 二時間も経っただろうか、相変わらず女は呆れるほどの忍耐強さでついて来た。乾いた肌に痛いほどの風が埃っぽい街のあらゆるものに吹きつけている。
 後ろを振り向くと、女が寒そうに手をこすりながら身体を丸めている。足には薄いサンダルを履いていた。
「サムイヨー。オナカスイタヨー。」
と、女は日本語で言い続けた。
 僕はだんだん「かわいそうだなぁ・・・」と思い始め、
「女郎屋へ行くつもりはない」
と言って彼女に小銭を握らせようとするが、
「お金はいらない」
と言う。
「何か暖まるものが食べたい。あなたと食べたい。」
と、いじらしい事を言うので、さすがの僕もほろりとなり、
「それじゃ何か奢るわ。」
と言って、食べ物屋に入りかけると、女は、
「私の知っているオイシイところあるよ」
と言って歩き始めた。おとなしくて薄幸そうな女だと思った。
 下街の高い壁のある露地へ出た。
「此処!」
と、女が指さしたので見ると、二メートルほどの高さの、昔ながらの赤レンガの壁があり、鉄格子のような開き戸がついていた。いかにも、あやしげな構えである。
「此処は女郎屋じゃないんか?」
と言うと、
「ちがうよー、あそこ見てよ」

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