2015年12月21日月曜日

十.韓国編-Ⅰ人々の中で-8

十.韓国編-Ⅰ人々の中で-8

このブログは一つの物語です。


初めての方は、1からお読み下さい。


丁度、その遊郭に同じ船の者が来ていて、
「あれは、船(うち)の和田の声に良く似てる」
と言い、女に、
「向うの部屋で『アハハハ』と、笑っているのは日本人じゃないか?」
と尋ねると、
「いや、あそこに居るのは台湾人」
と答える。
「ふーん」
と彼は言っていたが、また聞こえるあの声は、やはり和田に違いないと、
「あれは、船の仲間だ、ちょっと行って来る」
と立ち上がると、女はズボンを握り、
「いや、やめた方がいい、あの台湾人は人相の悪い大男だ」
と真剣に止める。
「どんな人相だった?」
「長髪で髭を伸ばして大きい顔だった」
「そりゃ、間違いない、和田だ」
と、確信を持った彼は、僕の部屋へ入って来たので、
「やぁー偶然だなぁー」
と、僕ら二人はワイワイ言いながら一杯飲み始めた。すると、それを聞きつけた女将が、
「あなた、ニッポン人か?」
と血相を変えてやって来た。
「いや、俺は日本の船に乗っている台湾人」
「そうか・・・?」
「それにしても、あなた、ニッポン語うまいネ」
「わたし、パパさん台湾人、ママさん日本人ね」
「んん・・・・・・・・?」
傍に居るおっさんは二人が何を言ってるのか、さっぱり分からずポカーンとしている。
 金は先に払っている。今さらばれては大変だ。それにしても、日本語で台湾人、と言って信じる方もおかしい、とは思わないか!?
 こうして僕は何軒か、建物を選び、宿を変えた。とにかく、裏びた所が好きなのだ。それに性格の悪い僕は彼女らの身の上話を聞くのを楽しみにしていた。
「うむ、うむ」
と頷きながら聞いてやると、彼女らはカタコトの日本語で涙を拭き拭き、身の上話を語った。薄幸な女が多かった。親から売られた話、恋人に裏切られた話、などなどといろいろだった。田舎の寒村の娘が多かった。

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