2015年10月14日水曜日

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅶ カンフーの先生-1)

ワタの旅と冒険-2 アフリカ偏(Ⅶ カンフーの先生-1)


このブログは一つの物語です。
初めての方は、1からお読み下さい。

 アフリカ大陸をさらに南下して、さらに南のカメルーンへと着く。丁度、ホンコン映画が上演されていた。このあたりになると東洋人はほとんどいない。道をゆくと、「チーノ」「チーノ」と声をかけられる。彼らは「ジャパン」という国を知らないのだ。東洋人はすべて、チーノ、チャイナ、中国人である。
 子供らが、ぞろぞろ後をついて来て、「ヤッ!」とか「ワッ!」とか言っては拳法のポーズをとる。子供らの数が段々増えてきて、その中の賢そうな子が代表で僕に英語で、「カンフーを教えてくれ」と言った。
 カンフーは知らなかったが空手と柔道は学生の時、少し齧(かじ)った覚えがある。どうせ暇だからと彼らに毎日、午後から広場で適当な空手を教える事にした。
 何日か後、この事が街中の噂となり、僕はカンフーの先生という事になってしまった。この国の人々は濁点が喋れず、僕の名を呼ぶのに、「ワダ」とは言えず、「ワタ」と呼んだ。子供らが、
「ワタ!ワタ!」
と、声をかけた。道を歩けば誰もが
「ワタ!カンフーティーチャー」
と叫んだ。食堂へ入れば親父が
「ワタ、チャンピオン」
と、言って御馳走を運んでくる。若い女も寄ってくるので、
「こりゃ、いいや」と、すっかり良い気分で「おう!」とか「うむ」とか言って、厚い顔をさらにぶ厚くさせ、威張って歩いていた。
 ある日、この国の国技であるボクシング大会が街で開かれるようになった。そして、この国のチャンピオンのボクサーが街へやって来て、僕の噂を聞いたらしく、ボクシングとカンフーとどちらが強いか、闘ってみたいなどと言っていた。
 良い気持ちで酒場でビールを飲んでいるところへ、そのチャンピオンがやって来た。ボボ・ブラジルのような顔と体格をした大男である。眼付きも鋭い。取り巻きの男が英語で
「チャンピオンがあなたと試合をしたいと言っている」
と言った。

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