六.運河を越えて
このブログは一つの物語です。
初めての方は、1からお読み下さい。
カナダ、アメリカの西海岸を廻り終えた後、僕の乗る船は、パナマ運河へとさしかかる。
初めての方は、1からお読み下さい。
米空母、ミドウェーが船体すれすれに運河を航行する。巨大なビルディングのように運河に聳え立つ空母。次から次と、真黒い潜水艦が浮上する。第七艦隊の大パレードである。
ようやく、僕らの船が岩壁に長いロープを投げると、インデオがウィンチへと掛ける。ぐぐっと船体が揺れ、巨大な水路へと引きずり込まれる。
水路の喫水を調整しながら水門を出ると、湖のように透き通る美しい運河を進む。青々と茂る樹木、水の上に森があり、森の下に河が流れる。樹木や草、すべてのものが水の中から生え茂っている。キラキラと陽に照らされ、眩しい眩しい光景である。
パナマの街は東南アジアのようにざわめき、騒がしい雰囲気が漂っていた。日本の漁船らが給油のため、よく滞在するこの街は、歩けば日本語で声をかけられる。
「あなた、スケベーヨ」
「あなた、あなた」
陽が暑く照り、額からぼたぼたと汗が落ちる。市場へオームを買いに行こうとするが、ポン引きや女らがむらがってくるのだ。日本語の流暢そうな女に
「オームは何処で売ってるか?」
と尋ねるが、
「オームはスケベーよ、あなた!」
と、全然話にならない。スケベーしか知らないようである。
ようやく、見つけた市場は大混雑で子供が、四、五匹のオームをカゴに入れて売っていた。
「ハウ、マッチ?(幾らだ?)」
と、尋ねると、回りからワイワイ言って人が集まって来て「幾ら、幾ら」と指を曲げる。お前らに聞いてるんじゃねぇ、この子に聞いてるんだ!
「何か喋れるか?」
と子供に尋ねると、
「ヤーヤー、セニョール、何でも喋るよ!」
と答え、オームに向って、
「セニョリーター、セニョリーター」
と言ってみる。すると、赤じゃ青じゃ黄色じゃと、尻尾が長くて派手なオームは、目ん玉をくりくりさせながら、
「ギャーグァー」
と、ジャングル語で叫ぶ。
何も喋れねぇじゃねぇか。
まぁ、気長に教えれば何か喋りだすだろうと、オームを抱きかかえ船へ帰ろうとすれば、原始人のオームが急に日本語で喋りだす。
「あなた、何するか?」
「あなた、何処行くか?」
「あなた、スケベーよ」
何処へ行こうが、何をしようが、俺の勝手だ。ほっといてくれ!
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