八.スマトラと南十字星-3
このブログは一つの物語です。
初めての方は、1からお読み下さい。
「汚いなぁ…」
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それでも冷たいビールが飲めるとあって待ったかいがあった。よくぞ氷を見つけてきた、とニヤニヤしている小僧に小銭をあげ、良い子だ、良い子だと頭を撫でていると、後ろでパッシューン、ゴボゴボと音がするので慌てて振り向くと、女がビールを洗面器の氷の塊に注いでいた。
「ああ、あ…あ…」
僕は連れとは行動しない主義だが、船の仲間に、つい誘われてタラップ近くまで車を乗りつけたポン引きの運転する車に乗って遊郭へと向った。
街を過ぎ、真暗なジャングルをドロンコの道を転げながら走って行く。熱帯特有の濃い緑の広い葉が窓ガラスを叩く。「ギャッ」、「グウェッ」とえたいの知れぬ動物の鳴き声がする。
「何処へ行くつもりだろう?」
とだんだん不安になってくる。
運ちゃんが、このあたりはハリマオー(スマトラのトラ)が出るから、と言ってスピードを上げ、ガタガタと車を揺らして突っ走る。
「おい、女と遊ぶのも命がけだなぁ」
と、友人に声をかけると、彼は青くなっていた。
真暗いジャングルをぬけると、目の錯覚か?赤や青のネオンが見えた。驚く事にこのジャングルの山奥に電気がある。自家発電であろうか?闇のジャングルから、一気にチカチカ輝くネオンを見て、目がぼわーと霞んでくる。悪い夢を見ているようだ。
国境線にあるような黄と黒の遮断機があり、運転手の顔を確認すると、「ギィー」といって台が上る。中には木造の家々がぎっしりと並び、一軒一軒の家の前に椅子が置かれ、女らが涼んでいた。売店も幾つかあった。
「へぇ!?街のようになってんだなぁ」
と思わず感心してしまう。男は居ない。女は百人近く居るという。ハリマオーの薄暗いジャングルに比べると、パラダイスだ。世の中、いろんな世界があるもんだなぁ、とほとほと感心していると、車に女達がむらがって来た。ひさしぶりの客らしい。
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