2015年11月13日金曜日

八. スマトラと南十字星-1

八.スマトラと南十字星-1


このブログは一つの物語です。


初めての方は、1からお読み下さい。

インドネシアのスマトラ島南東にデュマイという街がある。僕はこの街と日本とを往復する事になった。
 岩壁の対岸には蟹喰い猿と名づけた手の長い猿がバチャバチャと水の中に入り、蟹を取ってはムシャムシャと食っていた。
 この蟹喰い猿、蟹ばかり食っていれば良いものを船に忍び込んでは食い物を漁る。頭にきた僕らは猿が入って来たのを確かめると、タラップを上げて彼らを追い廻す。逃げる猿を追って船内をぐるぐる廻ると、猿はついに岸壁に張ったロープを伝って逃げようとする。が、素早く仲間が岸壁へ先廻りする。こうして船にも岸にも行けなくなった猿にロープをプラーンと緩めて縄跳びの縄みたいにたるませてから、プーンとロープを跳ね上げると、猿はロープにつかまったまま止っていて、それからボチャーンと海に浸かる。猿はロープにしがみつく。海に落ちるか、ロープに振られるか、だ。ビューン、バチャーン、根性、根性。
 動物愛護の人が聞いたら怒られるような話である。が、そういう僕らも彼らに食べ物をやったりしてけっこう可愛がっていた。
 また、別に猿ばかり苛めて喜んでいたわけではない。現地でアルマジロという蟻喰いを買った僕は可愛がっていつも連れて歩いていた。長い尾っぽで、眠る時はまん丸のゴムマリみたいになる奴で、とても可愛いもんだった。こいつは蟻しか食わず、蟻の傍へ行っては自分の身体の半分はあろう長い舌をベロンと出しては蟻を食う。のたぁり、のたぁりと歩くぶきっちょな姿は原始以来、進化を忘れたのんびり生物の姿であった。
 こののんびりさんの航海中の餌の確保が大変で、出航前に慌てて蟻を集めて廻るが、めんどくさいので現地のガキにこずかいをやっては集めさせていた。蟻こそいい迷惑だと逃げ廻っていた。飼い主に似た、のん気な僕のペットであった。

0 件のコメント:

コメントを投稿