2012年7月6日金曜日

35今どき破天荒な男達の物語

このブログは一つの物語です。

初めての方は、1からお読み下さい。
今どき破天荒な男たちの物語の1 


 この露天風呂は別府の温泉場らしく、外来の客にちょくちょく入れ墨をしたヤッちゃんが入っていた。彼らはザザッと五、六人の団体で来てバチャバチャと湯に浸かって出て行く。彼らが来ると他の客らは気味悪がって湯から上がっていくが、僕は知らん顔をして身体を擦っていた。僕がヤッちゃんに無頓着なのと、僕の悪い人相、それに身体中の傷跡を見てヤッちゃんも同業者か?と思ってじろじろ見るか、目を合わせないようにしている。それどころか、僕を“刺客”とでも思うのか?親分らしき男を囲んで、目つきの鋭いヤッちゃんが数人僕の動きを読む。そこで僕が“ガバッ”と湯から立ち上がると、彼らもびっくりして一斉に立ち上がろうとする。
こうしたヤッちゃんが湯からドタドタと上がって行くと、大学生らしき連中があたりをキョロキョロ見廻し、タオルで前を隠しながらざわざわと入ってくる。が、奥の方で身体を洗っている僕を見つけると、「あっ!まだ居た」と小声で呟いて再び引き上げて行く。

 この風呂は混浴なので、運が良ければ若い女性に巡り会うことがある。そういう時は、のぼせないように水をかぶりながら湯に浸かるが、最近の若い娘というのは大胆である。僕は気持ち良く湯に浸かりながら湯船の縁(ふち)で身体を擦っている娘の裸を、新幹線のスピードの速さと熟練した画商なみの洞察眼でカッと素早く見る。すると、彼女らも意識しているのか、わざと大胆なポーズをとったり、中には大股広げる若い娘もいる。そういう時は僕も頭にきてブラブラと彼女らの前を行ったり来たりする。
 このように、若い娘だけが入っているのならいいが、こういう温泉場には年寄りが多く、婆さん連中があざらしのようにべろーっと寝そべっていたり、トドのように湯に浮いていたりする。
 彼女らは歌を歌ったり騒いだり、かなりの御機嫌で「こりゃ、男と女のエキスが入り混じって元気になるわい」とか訳の分からんことを言ってははしゃいでいた。
ある時、僕がズカズカと入って来てバシャと湯に浸かり、気持ち良く月を眺めていたら、トドのようなおばさんが四、五人湯の中を泳ぐようにしてやってくる。
「おっ なんだ!なんだ!」
と、悪い夢を見ているように目を白黒させてうろたえていると、その体格の良いおばさんが
「兄ちゃん、いい身体しとるなぁ・・・」
と言って僕の肩を「ポン!」と叩くと、続けておばさん連中が「ポンポン」と僕の肩をさわっていった。





0 件のコメント:

コメントを投稿