2012年7月11日水曜日

39今どき破天荒な男達の物語

このブログは一つの物語です。

初めての方は、1からお読み下さい。
今どき破天荒な男たちの物語の1 

 また彼はヨーロッパアルプスだけじゃなく、ヒマラヤにも登ろうと強い憧れと野心とを持って、イスタンブールからアジア大陸へと渡り、トルコ、イラン、アフガニスタン、パキスタンと、最も気候も治安も悪いとされるアジアハイウエーと呼ばれるボロボロの道を、同じくおんボロのバスに揺られながらネパールへと辿り着く。そしてさっそくヒマラヤ山脈に入ると七千メートル級の山を二つ程登り、物価の安いこのあたりをうろうろとした。
 そして此処で現地で知り合った日本人旅行者と、ひさしぶりに旨いものでも食おうということになり、市場へ行って鶏を一羽買った。
「旨そうやなぁ・・・」
と、キツネのように目をギラギラさせながら鶏を下げ、街の食堂に入る日本人二人。さっそく店の親父を呼びつけると
「おい、これをさばいて料理するのは幾らだ?」と尋ねる。すると髭づらの親父は無愛想な顔で
「七十ルピー」と、ネパールの物価にしては法外な値段を言った。二人とも「むむ・・・」と頭にきたが、ひさしぶりに肉にありつけるとあってそこはぐっと我慢して
「まぁええわ、さばいてくれ」
と注文する。「ごくっ」と二人で唾を飲み込み、わくわくしながら待っているとしばらくしてキッチンされた鶏が皿に盛られてきた。と、ところがである。その皿を見て二人ともギョッとした。そして、二人同時に
「あっ!て、手羽がない」
と叫んだ。さき程の法外な値段と、生唾飲んで、まず肉の締まった手羽からと・・・待ちわびた期待感とが裏切られ、一気に彼らの怒りは爆発した。


「うお!」
と二人で親父を抱え上げると道路にドスンと落とし、二人でコブラツイストや四の字固めを交互に掛けた。親父は「ヒーヒー」うめき「なんだなんだ」と道ゆく人らが集まって来て、わいわい言って見物していたと言う。
「いやぁ、手羽がなかった時はほんま頭にきたぜ。ほんま、せこい奴っちゃなぁ」と思い出し怒りながら言い、さらに
「しかしあの時は、何処からか人がわいわい言って集まって来て、ふと見上げたら、わぁわぁ言いながら大勢がわしらを見とったので、慌てて親父を離したが怖かったぜほんま」
とも言っていたが、そういえば中野はよく
「昔の中国で、日本の軍隊が工事人夫を集めよう思うて、広場でピーヒョロ音楽鳴らすと何処からか中国人がぞろぞろ集まって来て、日本の軍隊にぱぁーと広い網を掛けられて連れて行かれたらしいが、アホな奴らやなぁ。音楽鳴らしたぐらいでぞろぞろ出てくるかなぁ。鶏つかまえるみたいやなぁ」
と話していたが、僕はネパールの彼の話を聞きながらその話を思い出していた。
 確かに僕も、西アフリカで、盗っ人の土人をつかまえ、路上でこらしめていたがその時も何処からかぞろぞろと土人が集まって来て、ふと見上げると町中の人の顔が有ったが、やはり寒気がするほど気味悪かった。あのように何処からかともなくぞろぞろと人が集まって
来る群集心理というのは、おもしろいものではあるがまた大変気味悪いものでもある。





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