2012年7月8日日曜日

38今どき破天荒な男達の物語

このブログは一つの物語です。

初めての方は、1からお読み下さい。
今どき破天荒な男たちの物語の1 

 サハラ砂漠というのは僕も行ったことがあるが、砂ばかりのところだけじゃなく、ステップかサバンナのような乾燥した荒地が多い。タイヤの跡が付いているというだけの道路に、窓のない信じられぬようなおんぼろバスが砂煙を上げて走っている。彼はこの道路を自転車で行ったらしい。
「いやぁ、途中でえらくアラブ人に世話になったなぁ」と彼が言うので僕はギョッ、と耳を疑った。アラブ人というのは確かにアリババの国らしく、気が許せず、今もそうであるが戦争、騒動なぞというのは奴らの祭りみたいなものでとにかく騒がしい人種である。それに僕は駅員に料金を倍ぼられ(・ ・ ・)たし、盗賊に会うわ、道を尋ねれば嘘ばかり教えられるわで、彼らに対する印象はひとつも良くなかったのである。
「おかしいなぁ・・・?アラブ人ってのは、てめえのことしか考えねえ奴ばかりで、人の世話をするような 奴は居ないだろう?」と僕が不思議そうに言うと、
「そんな事たぁないわ。わしゃ親切にしてもらったぜ。夕方、自転車を押して歩いとったらうちに泊まって行けって親切に泊まらしてくれたぜ」
「寝てる間に何か物を取られただろ?」
「そんなこたぁないぜ。御馳走を食わしてうはうはもてなしてくれ、あげくの果てに女房を貸したる言いよったぜ」
「おかしいなぁ・・・?そんなことはないはずなんだがなぁ、わしゃアラブでえらく騙されたぜ」
と、僕は腕を組んで唸るように言うと
「あんた、何かアラブで悪いことしたと違うんかい。アラブ人を騙したとか?それとも、アラブ人は人間を見きわめきるのかなぁ、あははは」
と、馬のような顎を突き出して笑う。
 こればかりは僕の合点のゆかぬ最大の謎であった。あの、せこいアラブ人が・・・あの、せこい中野と・・・と考えていると、ふうっ、と二人の共通点を見いだすことが出来た。アラブ人は中野を先天的に同胞、と見ぬいたのだ。そうでなくちゃ、あのアラブ人が外国人にそんなに親切にするはずがない。
 こうして彼は、サハラ砂漠の半分近くを自転車で縦断した。「砂嵐がひどい時には前は全然見えなかった」と言っていたが、彼が砂漠の真ん中で金星に向かって親指を立てたかどうかは謎である。





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