このブログは一つの物語です。
その中野も、現地泊まりで山さんらと一緒に仕事をしていたが、ある日、山さんに会って話していると、
「いやぁ、中野は体力があるしよく働くんだが、何故かぬけているところがあって用事をいいつけてもようこなしきらん。困ったもんだ」とぶつぶつ言っていたので
「もしかして山さん、中野にあれやれこれやれってまとめて用事を言いつけてるんじゃないかい?」と僕が尋ねると
「ああ、朝、仕事にかかる前にまとめて言ってる」
「ははーん、それが悪いんや」
「えっ?」
「アワワワってまとめて言うと混乱してしまうんやわぁ。まず、あれをやれってやらしといて、今度はそれが終わったらこれをやれって言ってひとつずつ仕事を言いつけてみたらどうかい?」と言うと
「うん、明日からそうしてみよう」
と、山さんは頷いていた。
その後、山さんに会ったら、ニコニコしながら、
「いやぁ、君の言う通りにしたら中野がよく仕事が出来るようになったよ」
と、感激しながら言い、
「君は中野の操縦法をよく知っとるなぁ。中野の観察家だなぁ」
と、感心しながら言っていたが、観察家じゃなきゃこんなものは書けん。
しかし、かくいう僕も以前、中野に完璧に馬鹿にされたことがあった。
ひさしぶりに皆んなで近郊の山へ泊りがけで行き、その夕は肉や野菜をひんちぎり、水炊きを作って楽しい宴会となったが、何か訳けの分からぬものも沢山入っていたようで夜中、急に激しい腹痛と下痢をもよおし、そのあまりの激しさに堪えきれず、登山靴を履かぬままテントを飛び出して河の方へ転げて行った。冬であった。雪のなkを転げ、バキバキと河の氷を割って歩き、ようやく用を足して氷の欠片で何度も尻をぬぐい、ひと息吐(つ)いてあたりを見廻すと真暗である。テントの明かりが見えない。おかしいなぁ?そんなに遠くまで来たかなぁ・・・?と思ったが、なにしろ夢中で気づかなかったようである。
まぁ、なんとかテントまで辿り着くだろうと河の氷をバキバキ割って歩き出すが、全く位置の見当がつかない。そのうち靴下は濡れてぐちょぐちょになるし、冷たくて足が痺れてくるわで寒さが身体中を覆いだす。こういうことが皆んなに知れたら馬鹿にされるだろうなぁ・・・と一瞬思ったが、さすがにこの寒さには耐えきれず
「おーい」「おーい」と真暗な中、叫び出し
「おーい」「ふぉーい」とだんだん声が薄くなる。
しばらく悲愴な叫びを上げるとキラッキラッとキャプライト(携帯用の懐中電燈)の明かりが近づいて来た。助かった!と思った僕は
「おーい、此処や!誰かぁ?」と叫ぶと
「あんた、こんな夜中に何しとるんかい?」と、中野の声である。一瞬、しまった!相手が悪い、中野に馬鹿にされたらお仕舞いだ、と思ったが
「あんた、気が狂ったんと違ゃうんかい?」
と、目をこするキャプライトに照らされた中野の顔が見えた。そして、
「困った人やなぁ・・・」
と、ぶつぶつ言う中野の後を、湿った靴下のままとぼとぼとついて行った。
翌朝、
「あんた、キャプライト持ってないのかい?傍に置いて寝るのは登山家の常識やぜ」
と、完璧に馬鹿にされてしまった。
その中野も、現地泊まりで山さんらと一緒に仕事をしていたが、ある日、山さんに会って話していると、
「いやぁ、中野は体力があるしよく働くんだが、何故かぬけているところがあって用事をいいつけてもようこなしきらん。困ったもんだ」とぶつぶつ言っていたので
「もしかして山さん、中野にあれやれこれやれってまとめて用事を言いつけてるんじゃないかい?」と僕が尋ねると
「ああ、朝、仕事にかかる前にまとめて言ってる」
「ははーん、それが悪いんや」
「えっ?」
「アワワワってまとめて言うと混乱してしまうんやわぁ。まず、あれをやれってやらしといて、今度はそれが終わったらこれをやれって言ってひとつずつ仕事を言いつけてみたらどうかい?」と言うと
「うん、明日からそうしてみよう」
と、山さんは頷いていた。
その後、山さんに会ったら、ニコニコしながら、
「いやぁ、君の言う通りにしたら中野がよく仕事が出来るようになったよ」
と、感激しながら言い、
「君は中野の操縦法をよく知っとるなぁ。中野の観察家だなぁ」
と、感心しながら言っていたが、観察家じゃなきゃこんなものは書けん。
しかし、かくいう僕も以前、中野に完璧に馬鹿にされたことがあった。
ひさしぶりに皆んなで近郊の山へ泊りがけで行き、その夕は肉や野菜をひんちぎり、水炊きを作って楽しい宴会となったが、何か訳けの分からぬものも沢山入っていたようで夜中、急に激しい腹痛と下痢をもよおし、そのあまりの激しさに堪えきれず、登山靴を履かぬままテントを飛び出して河の方へ転げて行った。冬であった。雪のなkを転げ、バキバキと河の氷を割って歩き、ようやく用を足して氷の欠片で何度も尻をぬぐい、ひと息吐(つ)いてあたりを見廻すと真暗である。テントの明かりが見えない。おかしいなぁ?そんなに遠くまで来たかなぁ・・・?と思ったが、なにしろ夢中で気づかなかったようである。
まぁ、なんとかテントまで辿り着くだろうと河の氷をバキバキ割って歩き出すが、全く位置の見当がつかない。そのうち靴下は濡れてぐちょぐちょになるし、冷たくて足が痺れてくるわで寒さが身体中を覆いだす。こういうことが皆んなに知れたら馬鹿にされるだろうなぁ・・・と一瞬思ったが、さすがにこの寒さには耐えきれず
「おーい」「おーい」と真暗な中、叫び出し
「おーい」「ふぉーい」とだんだん声が薄くなる。
「おーい、此処や!誰かぁ?」と叫ぶと
「あんた、こんな夜中に何しとるんかい?」と、中野の声である。一瞬、しまった!相手が悪い、中野に馬鹿にされたらお仕舞いだ、と思ったが
「あんた、気が狂ったんと違ゃうんかい?」
と、目をこするキャプライトに照らされた中野の顔が見えた。そして、
「困った人やなぁ・・・」
と、ぶつぶつ言う中野の後を、湿った靴下のままとぼとぼとついて行った。
翌朝、
「あんた、キャプライト持ってないのかい?傍に置いて寝るのは登山家の常識やぜ」
と、完璧に馬鹿にされてしまった。

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