2011年7月3日日曜日

ワタの旅と冒険-8 (太陽の国-3)

このブログは一つの物語です。
初めての方は、1からお読み下さい。
ワタの旅と冒険-1


マドリッドの美術館はルーブルに比べ味のある作品が多い。
中世隋一といわれる宮殿には数多くの美術品が並べられ、それは美しいものであった。
僕の隣で、花を一杯飾った帽子を被ったアメリカ人のおばさんが、「ビューティフル」を連発していた。肘に抱えた藤のバスケットから、にくったらしい顔をした白い犬が顔を出していた。
「オウー!ビューティフル」
と、部屋に入るたびにそのおばさんは叫び、僕の肩をつかみながら「ビューティフル」と幾度も叫んでいた。最初は愛想笑いをしていたが、仕舞いにはめんどくさくおばさんから離れようとするが、とにかく僕を探しては「ビューティフル」を連発する。
 宮殿を出て中庭で大きく息をしていると、丘の上から、おばさんが「ジャパニーズ、ジャパニーズ」と叫ぶので、「何だろう?」と、ふうふう坂を登って行くと、おばさんは丘の上からマドリッドの街並みを指さして、
「ビューティフル」
 僕は「はぁー」とため息をつく。
 うっすらとした紅い屋根が立ち並ぶ街並みは確かに美しかった。色彩が鮮やかで、茶色っぽい建物が夕陽に浮かび独特の雰囲気をかもしだしていた。
「キョウト イズ ビューティフル ツウ」
と、おばさんが呟いた。そうか、このおばさんが僕をつかまえては「ビューティフル」を連発するのは、京都で味わった感慨のお返しに、日本人である僕に美しいものを見せたかったのか、それにしても感激の多い少女のようなおばさんである。僕はこのおばさんを“ビューティフルおばさん”と名づけた。
「おーい 何処へ行っとった?」
「いやぁービューティフルおばさんにつかまってまいったぜ」
「なんかい、そりゃ?」
 僕らはこの美しい宮殿で記念写真を取る事にした。すると、
「和田さん、和田さん、日本に帰ったらこういう人が居たといって友だちに話すから記念写真を取らせてくれないか」
と一人が言うと、もう一人が
「そりゃ 話が見えるようだなぁ」
と言った。

太陽の国008

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