2011年7月17日日曜日

13今どき破天荒な男たちの物語 (風呂は道連れ)

このブログは一つの物語です。

初めての方は、1からお読み下さい。
今どき破天荒な男たちの物語の1 


 中野は女の娘と擦れ違うとすぐ「かわいいなぁー」とか言って振り向き、銭湯へ行けば必ず女湯を覗いた。銭湯へ行くと女湯の壁をよじ登り「あっ 目が合った!」などと言ってまた覗く。そのうち女湯の方から若い娘の声で「さっきから分かってるのよ、いいかげんにしてよ!」と声がかかる。それでも覗こうとする根性である。とうとう僕らは風呂上り、若い娘らに待ちぶせされ睨まれた。女の娘らは厚かましい男の顔を見てやろうと思ったのであろうが、おかげで僕は非常に恥かしい思いをする。この銭湯は地区の共同浴場で、僕が毎日通っている温泉であったのだ。
中野の住む隣り街には温泉はなく、本当の銭湯であった。ある日、中野と一緒にこの街中の銭湯へ行くが、彼はタオル一枚しか持たず、僕にもタオルだけでよいと言う。「俺は髪を洗いたいし身体も洗いたいんだ。シャンプーと石鹸は?」と僕が言うと「うちにはそんなものはない。でも、わしはいつも洗ってるぜ、まあ見てな」と彼は自信ありげに言うので、僕は何も言わずに彼の後をついて行った。どうするんだろう?と思っていたが銭湯に入ると中野が大きな声で「あっ!シャンプー忘れた」と叫び、隣のおっさんに「すんません、ちょっとシャンプー貸してもらえますかぁ?」と言うので、おっさんもしょうがなしに貸してくれる。そのシャンプーの容器を彼はギュッと両手で力一杯絞ると、シャンプーを手の平にどぼどぼと充分過ぎる量を取ると僕に手渡す。そして「な、わしは嘘をつかんやろう」と、また自慢げに言う。僕は何も言えず黙ってシャンプーを受け取るとなにか急に情けない気持ちになる。隣でまた中野が「あの・・・リンスも・・・」と言っている。彼はこの街で何年間もこういう生活をしてきたのだろうか?よくも同じ人に借りないものだと、下町の人の、人の良さに感服してしまった。むろん中野が何日おきに風呂に入っていたかはさだかではないが・・・・?





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