このブログは一つの物語です。
このように、彼はフランスに居る時、「日本では何倍で売れる」とわくわくしながら送ったものは、高く売れるどころかすべて二束三文か、人にくれてやったのである。
その競技用の、日本で買えば二、三十万はする軽自転車も一台は僕のうちにある。もう一台は、運転免許を剥奪された歯科技工師の三郎が可哀そうだ・・・?と言って、中野が二束三文で売ってやった。
僕の持ってる一台は、彼と夕方、例の露天風呂の“楽々園”へ行った帰り、湯上りにブラブラ歩いていると中野が何を思ったか、突然、
「ソープランドへ行くからあんた、金貸さんかい?」
と言いだした。急に何を思ったんだろう・・・?と思ったがそこは中野のことである。深く考えないようにして、
「貸すというより、お前、あのもう一台の自転車を俺にその金で売らんか?」
と、ふっとした思いつきで冗談まじりに言ってみると
「ああ、ええわ!」
と答えたので、僕は一瞬、「はっ!?」と耳を疑ったが、中野の思いつめた顔を見るとすかさず二万円渡した。
この衝動的というか動物的というか、これもまた、ホモ・サピエンスに程遠いものであった。何処までも本能優先で行こうという腹である。
僕は金を渡したものの中野が自転車を持って来るかどうかが心配で、中野に会うたびに「自転車は?」と尋ねていたが、ある天気の良い日曜日、奇麗に手入れされた軽自転車を僕のうちに持って来た。
彼の弁当屋は順調に流行(はや)っているようで、中野も忙しそうに太い身体を狭い厨房の中でくねらせて動き廻っていた。
ある夏の暑い日、彼の弁当屋へ行ってみると、何処から仕入れたか?古く、色の剥げかかった缶ジュースの自動販売機にペンキを塗っていた。
「おっ!こりゃ何処から拾ってきたんか?」
とボロボロの自販機をガーン!と蹴飛ばすと
「シイーッ」と人さし指を立てて口に当て、あたりをキョロキョロ見廻す。
「人聞きの悪いこと言うなぁ・・・五千円でクズ屋から買ってきたんだぜ!」
と、ブルーのペンキをペタペタ自販機に塗りたくっていた。
「しかし、俺りゃこういう色の自販機は見たこたぁねえなぁ・・・」
と言うと「そうかな・・・?」と中野は不安気に振り向いて
「どんな色がいいかなぁ・・・?」
と、ブルーに塗りかかった自販機を眺めては悩んでいた。
「お前、缶ジュースはどうするんや?」
「缶ジュースは安いのばっかり入れようと思うんや。ほれ、名の無い安いメーカーのがあるやろ」
「あはは、お前は馬鹿か。最近のガキはなぁメーカーを見て物を買うんやぜ。お前みたいに安けりゃ良いという人間は東京オリンピック以来出現してないわ!」
というと中野は急に「そうかなぁ・・・」という顔になり、また悩みだす。
このように、彼はフランスに居る時、「日本では何倍で売れる」とわくわくしながら送ったものは、高く売れるどころかすべて二束三文か、人にくれてやったのである。
その競技用の、日本で買えば二、三十万はする軽自転車も一台は僕のうちにある。もう一台は、運転免許を剥奪された歯科技工師の三郎が可哀そうだ・・・?と言って、中野が二束三文で売ってやった。
僕の持ってる一台は、彼と夕方、例の露天風呂の“楽々園”へ行った帰り、湯上りにブラブラ歩いていると中野が何を思ったか、突然、
「ソープランドへ行くからあんた、金貸さんかい?」
と言いだした。急に何を思ったんだろう・・・?と思ったがそこは中野のことである。深く考えないようにして、
「貸すというより、お前、あのもう一台の自転車を俺にその金で売らんか?」
と、ふっとした思いつきで冗談まじりに言ってみると
「ああ、ええわ!」
と答えたので、僕は一瞬、「はっ!?」と耳を疑ったが、中野の思いつめた顔を見るとすかさず二万円渡した。
この衝動的というか動物的というか、これもまた、ホモ・サピエンスに程遠いものであった。何処までも本能優先で行こうという腹である。
僕は金を渡したものの中野が自転車を持って来るかどうかが心配で、中野に会うたびに「自転車は?」と尋ねていたが、ある天気の良い日曜日、奇麗に手入れされた軽自転車を僕のうちに持って来た。
彼の弁当屋は順調に流行(はや)っているようで、中野も忙しそうに太い身体を狭い厨房の中でくねらせて動き廻っていた。
ある夏の暑い日、彼の弁当屋へ行ってみると、何処から仕入れたか?古く、色の剥げかかった缶ジュースの自動販売機にペンキを塗っていた。
「おっ!こりゃ何処から拾ってきたんか?」
とボロボロの自販機をガーン!と蹴飛ばすと
「シイーッ」と人さし指を立てて口に当て、あたりをキョロキョロ見廻す。
「人聞きの悪いこと言うなぁ・・・五千円でクズ屋から買ってきたんだぜ!」
と、ブルーのペンキをペタペタ自販機に塗りたくっていた。
「しかし、俺りゃこういう色の自販機は見たこたぁねえなぁ・・・」
と言うと「そうかな・・・?」と中野は不安気に振り向いて
「どんな色がいいかなぁ・・・?」
と、ブルーに塗りかかった自販機を眺めては悩んでいた。
「お前、缶ジュースはどうするんや?」
「缶ジュースは安いのばっかり入れようと思うんや。ほれ、名の無い安いメーカーのがあるやろ」
「あはは、お前は馬鹿か。最近のガキはなぁメーカーを見て物を買うんやぜ。お前みたいに安けりゃ良いという人間は東京オリンピック以来出現してないわ!」
というと中野は急に「そうかなぁ・・・」という顔になり、また悩みだす。

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