2012年12月20日木曜日

62今どき破天荒な男達の物語

                             63~82(最終回)へ続く ● ● ● ⇒
 
 また、おもしろいことに彼は部屋に紐を引っぱって、それにオーバーやズボンなど有りったけの服を洗濯物でも干すかのように、だらーん、と並べていた。彼に言わせれば、これは干しているのではなくインテリアの一種だと言う。あんまり物が無く、殺風景なものだから単に有る物をすべて表に出しているだけのことである。
 また、彼の万年布団の枕もとには、学生時代より持っている、昔流行(はや)った中学生が持つような厚紙で出来たボックスバッグが置いてあり、この中に、預金通帳やパスポートその他大事と思われるものすべてを入れているものと思われる。
 このあまりにも索漠とした部屋に、僕は営業用のサービス品である、ティッシュやタオル、カレンダー、その他、もろもろのものを持って行ってあげた。
 また、おもしろいことに、この部屋の襖(ふすま)や壁に短い漢詩が貼られてあって、中野が自分で創ったものと言い、ひとつひとつの意味を僕に説明しようとしていた。
僕が「俺は短歌が好きだ」と言うと、
「あれは女が書くもんや」と言い返し、
「やっぱり男は漢詩を書かなあかん」と自分で言って自分で納得していた。
 人には何か珍しい趣味や特技があるもんだぁ・・・・?と僕は初めて、この不可解な男がホモ・サピエンスに近い存在であることを知った。
  その彼も、仕事をしていないからであろうか、ますます抜けたような顔になり、何んの仕事をやるとか、するとかアイデアをいっぱい出していたが、現実性のないアイデアを僕がすべて理屈で叩きつけてしまうと、彼は「うーん」と唸り、「カツ丼屋でもするか!」と、また、全く進歩の無いことを言う。カツ丼屋も弁当屋もあんまり変わるもんかい。食い物に困り出したら、すぐ“食い物商売”をやろうとする卑しい根性である。
 そこで僕が「何んの商売をするにも、お前に掛けているのは社会的なものと常識なんやから、まずそれを身につけるために、サラリーマンで営業でもしてみたらどうかい?勉強と思ってやってみたらいい」と言うと。彼も納得したらしく「そんなら、そうしてみるか」と言っていた。



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