2012年12月14日金曜日

60今どき破天荒な男達の物語,


 うちのクラブに大石さんといって四十代後半の気の若い仲間が居る。この人は左官業をやっているのだが、じっとしているのが嫌いな性格らしくいつも気ぜわしく動き廻る。山でテントを張っても、さっと寝込み、朝、暗いうちからごそごそと起き出し
「おーい、皆んな飯が出来たぞ!」
と言う人である。
 この人はひどい凝り性でもある。北アルプスへ行くのに、飛行機で行くことになったのだが僕らが、空港のロビーでビールを飲んでいると「パッ!」とフラッシュ焚かれるので「どうしたの?」と振り返ると大石氏が写真を撮っていた。「パッ!」「パッ!」と幾らでも空港のロビーでフラッシュを焚くもんだから、人が「何んだろう?」と不思議そうに見ていた。単に記念写真を撮っていただけのことであるが、この頃はカメラに凝りだした頃であった。
山へ入ってもバチバチ、シャッターを押しまくるので登行の途中
「あっ、いい景色やなぁ。絵になるなぁ」
と僕がわざと言うと、ごそごそカメラケースを開け「ガシャン!」とシャッターを押す。そして
「みっちゃん、悪いけど撮ってくれないかなぁ」
と、そのアングルの前で片足を上げてポーズをとる。
 また、この人はカッコマンでもある。
 ある夏の暑い盛り、僕らは県南の海岸ぞいに岩場があるのを知り、海水浴かたがた出掛けることにした。岩場といっても海辺にあるただの崖である。
 僕らは、さあ、泳いだり崖を登ったりして遊ぼうと海水パンツ一枚で地元の子供らの大勢いる砂浜へと飛び出す。が、ふと見ると、大石氏がこのクソ暑いのに山岳の格好をして皮の登山靴を履き、ヘルメットをかぶってザイルを巻いて立っていた。
 真っ黒に日焼けした海水パンツ姿の子供らが不思議そうに彼の姿を見ていた。僕らは何も言わず、泳いだり裸足で岩を攀(よ)じ登ったりして遊んでいた。



 この大石氏、一度スキーに行ったら、すっかりスキーの虜とりこになってしまい、さっそく、スキー具からウエアーまで一式買い揃えると、
「スキーに行こう、行こう」
と、叫ぶのである。年がいもなく真っ赤なウエアーを着て、さっそうと転ぶのである。
 冬の盛り、急に彼が「スキーへ行こう」と言いだしたので、僕は彼と一緒に行くことになった。一泊二日である。他のメンバーは以前から予定を立てていて、民宿を予約していたが、僕らは駐車場にテントを張ることにした。それも、また夏用のテントを持って来たものだから、寒くて寝れやしないし、他の奴らは民宿で女の娘らと楽しくやっているだろうと思うと、よけい腹が立って眠れなくなる。

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