2011年5月4日水曜日

6今どき破天荒な男たちの物語 (売られた喧嘩は買わねばならぬ)

このブログは一つの物語です。

初めての方は、1からお読み下さい。
今どき破天荒な男たちの物語の1 

 冬であった。小雪のチラチラ舞う寒い冬であった。クラブの例会が終わり、あの何もない索漠としたアパートへ帰る中野を引き止め、「何か食って行こうか?」と中華料理店へ入った。そして、まだ食いたりない様子の中野と一緒に、街の噴水でタコ焼きをふうふう言いながら食っていた。僕は一杯飲みたかったが、単車で来ているので飲めず、中野も明日は大事な追試がある、と言っていた(中野は学生であった)。
 僕は寒いのでおとなしく帰ろうと、単車に股がってヘルメットをかぶり中野とボソボソ話していた。夜、遅いので人通りもまばらである。ふと、前方を見ると、柄の悪そうな男ら五人が、通りを行く女の娘(こ)をひやかしながら歩いていた。一杯飲んでいるのか?良い威勢である。そいつらは僕らの所まで来ると、
「おーい、この噴水は金魚が居たはずだぜ」「おい、お前ら金魚を食ったんじゃねえか!」
とチビのチンピラが言った。グラグラ頭に血が昇った僕は
「なに!この田吾作が!」
と、怒鳴る。すると、チビが足をバタバタさせながら、
「こ、こいつが俺のことを、た、たごさくて言うた」
と狼狽(うろた)える。
 僕は単車から降りると、単車のスタンドを立て、かぶっていたヘルメットのベルトをはずす。すると、すかさず男が殴りかかってきた。大乱闘だ。小雪が舞い、凍りついた噴水の池の中に腰まで浸り、彼ら二人ともみ合う。「中野は?」と思って、振り向くと大柄の男と相撲を取るみたいに組み合っていた。
「ビン!ビン!」と彼らを殴りつける。すると例のチビの男が「さ、刺すぞ!」と言って胸のあたりをごそごそ探った。「おっ!」と中野と一緒に後退りするが、なかなか何も出てこない。チビはしばらく胸をごそごそやっていたが、何も出そうにない。期待して見ていた仲間の一人があきれて歳末大売出しの旗をバキッと折って棒を持って向かってきた。
「ビシッ」
と、首を痺かれた。僕は逆上すると、「くそ!」とヘルメットを、ガーン!と投げつける。ヘルメットは男の胸に「ガツッ」と当たり、男はしゃがみこむ。さらに、単車を投げつけようと、「くラー」と抱えあげようとする。」「むむむ・・・」と男らは後退りする。


そこへ、「ウーン」「ウーン」と、サイレンを鳴らしながらパトカーの登場である。逃げ廻る僕らはつかまえられ、警察へ捕らわれの身となった。しかし、さいわいな事に、彼らは僕らに会う前にスナックで大暴れして、何人も怪我をさせ警察で探していた連中だったので僕らも被害者ということになった。調書を取る時、中野と二人で
「いやぁ、立っていたら突然殴りかかって来て、気違いか、何かと思った」「僕らは逃げるのに必死でした」とか、言っていた。
 面通しの時、彼ら一人一人を見ると、顔は腫れ、鼻血を流していた。僕の顔を見ると、「あ、あいつに殴られた!」と男が立ち上がって叫ぶ。警察が「殴ったのか?」と尋ねるので、「いや、逃げようとして偶然、肘が当たったんでしょう」と答えていた。ようやく、僕らが解放された時は、夜が白(し)ら白(じ)らと明けかかっていた。中野は
「明日、やない、もう今日や、追試があるのに睡眠不足で、こりゃ、あかんわ。それにしてもあんたひどい人やなぁ、あんたの傍に居るとろくなことないわ、ほんまやぜ、喧嘩売ったのはあんたの方やぜ、黙っとりゃ良いのに、「田吾作!」なんか言うて、しかし、あのチビ、「田吾作」って言うたら血相変えて怒っとったけどほんまに田吾作やったんやなぁ・・・」
と改めて感心するように言っていた。




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