2013年2月13日水曜日

69今どき破天荒な男達の物語


 そして、食事に誘ったガールフレンドもその後何度か会ったが、食事の件は知らん顔をしていた。友だちに騙された、とも格好悪くて言えないし、わざわざ金を使ってまで中野の勤めてるホテルへ行くこともないので、その話はそのままにしておいた。女の娘の方も、僕が誰か他の娘と行ったものと思い込んだか、あまりものを言わなくなった。
 そういうことはどうでも良かったが、中野は今回は許すわけにはいかなかった。あれ程、失業中に世話をしてやったのに、恩を仇で返すとはこのことであった。
「中野とは絶交した!」
と友人らに言って歩くと、皆、くすくすと笑っていた。
 その後、中野がこの話を聞きつけたか、
「分かった、分かった。あんた、皆にわしの悪口言うて歩いとるなぁ。分かったからレストラン予約しとこうか。何時がいいかい?」 
と言ってきた。
 僕は彼を許す気持ちはなかったが、反省の色の全くないあいかわらずの顔を見ていると、こいつを人間だと思うから腹が立つんだと自分を慰め、堪忍することにした。

 こうして僕は、けったくそ悪い思いをしてようやくホテルへ食事に行くことが出来た。例のガールフレンドを誘うとびっくりしていたが、中野に騙されたことを正直に話し、ホテルへ向かうと幸いなことに中野は居なかった。
 チケットの企画は終わり、そのレストランで中野のリザーブした食事をとることになったが、一人一万円の食事にはとうてい程遠いものであった。食事中にその娘はお見合いすることにしたとか言っていたが、そういうことはどうでも良いことであった。
 翌日、山下のペンションで酒を飲んでいると、中野から電話があったので
「いやぁ 昨日は済まなかったなぁ(何故俺が謝らなきゃならないのか?)幾らぐらいかかったかい?」
と、わざわざ聞くと、中野は「うぐっ」と口を濁らし
「たくさんや」
と答える。人を土人がアラブ人かと思っとるなと、また腹が立ったが
「一人五千円ぐらいか?」
と、わざと少なめに聞くと
「もうちょいや」
と本当の事を言った。

0 件のコメント:

コメントを投稿