このブログは一つの物語です。
さて、中野だが、案の定、茨城には思惑があって三ヶ月ほどで帰って来た。原子力発電所の建築工事に行っていたのだ。そこで放射能の汚染度が限界にきたので帰郷させられた、という。むろん、給与はべらぼうに高い。彼は学生の頃からアルバイトは給与の一番高いのを選んで行っていた。職種なぞは関係はない。金のためなら、本当によく働く男である。おそらく、この茨城の原発工事も、職安あたりで一番給与が 高かったものと思われる。
そして、彼はさらに給与の高いアルジェリアで給油パイプの工事をする仕事を見つけてきた。月収四十万という。二年は帰れないという。「たくさん死者が出ているから帰れないかも知れない・・・・」とも言っていた。まさに、地の果てアルジェリアである。
その彼のアルジェリア行きは給与金額もさることながら、砂漠への憧れもあったようで、サハラ砂漠を縦断したいなどと言ってよくアパートでアフリカの地図を広げていた。
ある日、彼が僕の家へ来て、天文航法の本を貸してくれ、サハラ砂漠を縦断する時に自分の位置を出すのに使うからと、熱心に僕の本棚から数冊の本を取り出して抱き抱えて持って帰った。僕は感心して「分からないところがあったら聞きに来い」と言っていたが、天文航法というのはわりと難しく、また計算が多いので独学では無理だろうと思っていた。緻密な計算が必要なのである。数日後中野と会った時「どうか?分かったか?難しいから無理だろう?」と言うと「分かった」と威張って胸を張って言う。僕は一瞬うろたえたが平成を装い「ほ、ほーお、そりゃたいしたもんだで。お前、六分儀コンパスはどうするのか?」と尋ねると「えっ?六分儀?指じゃ駄目なんかい?」と言う。馬鹿なことを言うもんだ。六分儀コンパスで星の位置を測り、その角度から緻密な計算をして現在地を出すのが天文航法なのに、六分儀なしで何の計算か、何にも分かっちゃいないじゃないか!
そこで僕は、以前中野に話したことを思い出した。大昔のノルマンディの海賊は、水平線に向かって親指を立てて、金星と水平線の角度を親指と人さし指で測っておおまかな船の現在位置を知ったという話である。あれは熟練した海賊が自らの庭みたいな海で、全く水平な水平線で行ったもので、砂漠の真ん中で親指立てたって何も分かるものじゃない。僕は中野の考えてる意図が馬鹿馬鹿しくなって早々に大切な本を引きあげた。
さて、中野だが、案の定、茨城には思惑があって三ヶ月ほどで帰って来た。原子力発電所の建築工事に行っていたのだ。そこで放射能の汚染度が限界にきたので帰郷させられた、という。むろん、給与はべらぼうに高い。彼は学生の頃からアルバイトは給与の一番高いのを選んで行っていた。職種なぞは関係はない。金のためなら、本当によく働く男である。おそらく、この茨城の原発工事も、職安あたりで一番給与が 高かったものと思われる。
そして、彼はさらに給与の高いアルジェリアで給油パイプの工事をする仕事を見つけてきた。月収四十万という。二年は帰れないという。「たくさん死者が出ているから帰れないかも知れない・・・・」とも言っていた。まさに、地の果てアルジェリアである。
その彼のアルジェリア行きは給与金額もさることながら、砂漠への憧れもあったようで、サハラ砂漠を縦断したいなどと言ってよくアパートでアフリカの地図を広げていた。
ある日、彼が僕の家へ来て、天文航法の本を貸してくれ、サハラ砂漠を縦断する時に自分の位置を出すのに使うからと、熱心に僕の本棚から数冊の本を取り出して抱き抱えて持って帰った。僕は感心して「分からないところがあったら聞きに来い」と言っていたが、天文航法というのはわりと難しく、また計算が多いので独学では無理だろうと思っていた。緻密な計算が必要なのである。数日後中野と会った時「どうか?分かったか?難しいから無理だろう?」と言うと「分かった」と威張って胸を張って言う。僕は一瞬うろたえたが平成を装い「ほ、ほーお、そりゃたいしたもんだで。お前、六分儀コンパスはどうするのか?」と尋ねると「えっ?六分儀?指じゃ駄目なんかい?」と言う。馬鹿なことを言うもんだ。六分儀コンパスで星の位置を測り、その角度から緻密な計算をして現在地を出すのが天文航法なのに、六分儀なしで何の計算か、何にも分かっちゃいないじゃないか!
そこで僕は、以前中野に話したことを思い出した。大昔のノルマンディの海賊は、水平線に向かって親指を立てて、金星と水平線の角度を親指と人さし指で測っておおまかな船の現在位置を知ったという話である。あれは熟練した海賊が自らの庭みたいな海で、全く水平な水平線で行ったもので、砂漠の真ん中で親指立てたって何も分かるものじゃない。僕は中野の考えてる意図が馬鹿馬鹿しくなって早々に大切な本を引きあげた。
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