このブログは一つの物語です。
ある夕方、遊び疲れて帰って来ると、僕のベッドにフランス人のガキが寝ていた。「おかしいなぁー」と思ってキョロキョロ部屋を見廻し、
「おい、此処は俺の寝る所だ」
と、フランス人のガキに言うと、太っちょのガキはサッとベッドから起き上り
「ユーアーグッド(お前は元気だ)」
と、一言言って、またベッドに潜り込んだ。憎ったらしいガキである。しばらくして、ナースがやって来て、
「もう元気になったから退院して良い」
と言う。
退院して良い、と言っても、困った。外は雨が降っている、テントはない、シャモニーのホテルは怖ろしく高い。
街へ出ると、先程から振りだした霧雨で濡れた街角は、うっすらとして日本にはないシックな雰囲気をかもし出していた。
彼らが帰って来るまでビヴァーク(野営)である。スーパーへ行って食料を調達すると、テントの跡にツェルト(簡易テント)を張ってなんとか寝れるようにすると、買って来たワインの方が安いので、
「こりゃ、ビールを飲むよりいいや」
と、フランス人にでもなった気分でドボドボとグラスに注いで、赤い鮮やか過ぎる色のワインを飲んだ。すると、夜中に突然、激しい頭痛と口渇で眼が覚める。防腐剤のいっぱい入った激安のワインをビールのつもりでぐいぐい飲みまくってしまったからである。野を転びながら駅まで下り、トイレの水道の水を胃袋が脹れ上るまで飲むが、飲んでも飲んでも喉が渇き、夜が明けるまで水を飲み続けた。
二日程すると、さらに雨が激しく降り始め、ツェルトも寝袋も濡れてぐちゃぐちゃになり、森の中、一人傘をさして座って寝るが、
「もう、耐えられん、こんな生活はイヤだ」
と、傘を投げ捨てた。
スペインの青い空と青い海が目に浮んだ。入院中に念入りに今後の旅行計画をたてていた僕は、早くこの雨ばかりのシャモニーから離れたかった。が、彼らが帰って来るまでシャモニーで荷を確保しなければならない。
「うむ・・・・・・?」
よ、考えた末、再び屋根のある病院に戻ると、病院に潜伏し、掃除場のロッカーに住みつき、モップとモップの間に座り込み、じっと影を潜めた。
掃除のおばさんがロッカーの扉を開け、
「オゥー!」
と叫び、“叱られる”と思ったが、シスターを連れて来て、そっと扉を開けミルクとパンを差し出してくれ、夜には再び毛布を持って来てくれた。僕は感激と好意に唇を噛みしめ、掃除ロッカーの住人となった。
何日かして、彼らが帰るべく約束の日が過ぎると、僕はサッと荷をまとめ、彼らの荷を病院へ預けるとシスターに手紙をことずけた。
「俺は此処で七月二日まで待った。この雨には耐えられぬ。君らの居るグリンデルワルトを経て、スペインへ行く。さらばじゃ!」
ある夕方、遊び疲れて帰って来ると、僕のベッドにフランス人のガキが寝ていた。「おかしいなぁー」と思ってキョロキョロ部屋を見廻し、
「おい、此処は俺の寝る所だ」
と、フランス人のガキに言うと、太っちょのガキはサッとベッドから起き上り
「ユーアーグッド(お前は元気だ)」
と、一言言って、またベッドに潜り込んだ。憎ったらしいガキである。しばらくして、ナースがやって来て、
「もう元気になったから退院して良い」
と言う。
退院して良い、と言っても、困った。外は雨が降っている、テントはない、シャモニーのホテルは怖ろしく高い。
街へ出ると、先程から振りだした霧雨で濡れた街角は、うっすらとして日本にはないシックな雰囲気をかもし出していた。
彼らが帰って来るまでビヴァーク(野営)である。スーパーへ行って食料を調達すると、テントの跡にツェルト(簡易テント)を張ってなんとか寝れるようにすると、買って来たワインの方が安いので、
「こりゃ、ビールを飲むよりいいや」
と、フランス人にでもなった気分でドボドボとグラスに注いで、赤い鮮やか過ぎる色のワインを飲んだ。すると、夜中に突然、激しい頭痛と口渇で眼が覚める。防腐剤のいっぱい入った激安のワインをビールのつもりでぐいぐい飲みまくってしまったからである。野を転びながら駅まで下り、トイレの水道の水を胃袋が脹れ上るまで飲むが、飲んでも飲んでも喉が渇き、夜が明けるまで水を飲み続けた。
二日程すると、さらに雨が激しく降り始め、ツェルトも寝袋も濡れてぐちゃぐちゃになり、森の中、一人傘をさして座って寝るが、
「もう、耐えられん、こんな生活はイヤだ」
と、傘を投げ捨てた。
スペインの青い空と青い海が目に浮んだ。入院中に念入りに今後の旅行計画をたてていた僕は、早くこの雨ばかりのシャモニーから離れたかった。が、彼らが帰って来るまでシャモニーで荷を確保しなければならない。
「うむ・・・・・・?」
よ、考えた末、再び屋根のある病院に戻ると、病院に潜伏し、掃除場のロッカーに住みつき、モップとモップの間に座り込み、じっと影を潜めた。
掃除のおばさんがロッカーの扉を開け、
「オゥー!」
と叫び、“叱られる”と思ったが、シスターを連れて来て、そっと扉を開けミルクとパンを差し出してくれ、夜には再び毛布を持って来てくれた。僕は感激と好意に唇を噛みしめ、掃除ロッカーの住人となった。
何日かして、彼らが帰るべく約束の日が過ぎると、僕はサッと荷をまとめ、彼らの荷を病院へ預けるとシスターに手紙をことずけた。
「俺は此処で七月二日まで待った。この雨には耐えられぬ。君らの居るグリンデルワルトを経て、スペインへ行く。さらばじゃ!」

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