このブログは一つの物語です。
その点中野はしぶとく、なかなか落ちなかった。何処となく用心深い彼の性格がそうさせるのだろう。
船乗り洋一は技術的にも体力的にも落ちる要素はなかった。それどころか日本の岩壁をなめているのか、よくノーザイル(ロープなし)で登っていた。
やはり宮崎の岩峰で、前夜飲み過ぎた僕と洋一はルートの取り付きを間違ってしまい、全く未知の壁へ取り付いた。むろんハーケンなぞは打ってないしまた、持っていなかった。
「おかしいなぁ・・・?あの洋ちゃんがえらく苦労してるなぁ」
と、僕はセカンドで下からザイルを握って見ていたが、登ってみるととんでもない壁であった。ふうふう言いながら登って行ったが下へ降りて行くと、僕らを下から見ていたクライマーらがやって来て
「いやあ凄いですねぇ、初登ですねぇ。あそこは難しいから誰も手付かずだったんですよ」
と言っていたが、二日酔いでルートを間違えたとも言えず僕らはニヤニヤ笑っていた。
この壁も洋一がハーケンも打たず、トップで登ったものだが彼の度胸には恐れ入ってしまう。
また北岳という、富士山の次に高い山に高度差千メートル近い、日本で一番長くまた標高も高いとされる大岩壁がある。此処を登ろうと僕と洋一は計画していたのだが、急に洋一が船に乗ることになったので僕はザイルパーティーが居なくなって困っていたら、洋一が
「おい、あそこは女も登る所だぜ」
と、急に言い出した。
「いや、確かに女も登っているが、男に引っ張り上げてもらって登ったんだ。それがどうかしたか?」
「ほ、ほーう。お前、女が登るところを登れないのか?」
「でも、ザイルパートナーが居ないじゃないか?」
「一人で行きゃいいじゃねえか?」
「ひ、一人ってあの岩壁を単独で行くのか?ザイルなしでか?」
「そうやぁ」
「落ちたらどうするのか?」
「そりゃ、お前、運が悪かったと思って諦めな」
「・・・・・・」
「洋ちゃんだったら単独で登れるかも知れぬが俺りゃ自信ねえなぁ」
「ほ、ほーう。お前、女が登るところを登れねえのか?」
「でも、ザイルが有るのと無いのとでは違うじゃねえか。墜落した時に止まるのと下まで落ちるのとは全然違うぜ。それもあの長い岩壁じゃなぁ・・・」
「ほ、ほーう。それじゃお前、俺が単独で登って帰って来たらどうするか?カッコ悪いなぁ。お前、女が行く所をだなぁ・・・・」
と、えらく女にこだわる船乗りの洋ちゃんととりとめのない議論をして、僕も「うむ・・・単独で行ってみようかなぁ・・・?」と思い悩んでいたが、結局、一般登山ルートから単独で行くようになった。そして、雲の切れ間に聳え立つ岩壁を眺めながら「洋ちゃんもひどいこと言うなぁ、あんな所、単独で行けるかい」と煙草を吹かして独り言を言っていた。洋一なら単独で行けたであろう大岩壁である。
その点中野はしぶとく、なかなか落ちなかった。何処となく用心深い彼の性格がそうさせるのだろう。
船乗り洋一は技術的にも体力的にも落ちる要素はなかった。それどころか日本の岩壁をなめているのか、よくノーザイル(ロープなし)で登っていた。
やはり宮崎の岩峰で、前夜飲み過ぎた僕と洋一はルートの取り付きを間違ってしまい、全く未知の壁へ取り付いた。むろんハーケンなぞは打ってないしまた、持っていなかった。
「おかしいなぁ・・・?あの洋ちゃんがえらく苦労してるなぁ」
と、僕はセカンドで下からザイルを握って見ていたが、登ってみるととんでもない壁であった。ふうふう言いながら登って行ったが下へ降りて行くと、僕らを下から見ていたクライマーらがやって来て
「いやあ凄いですねぇ、初登ですねぇ。あそこは難しいから誰も手付かずだったんですよ」
と言っていたが、二日酔いでルートを間違えたとも言えず僕らはニヤニヤ笑っていた。
この壁も洋一がハーケンも打たず、トップで登ったものだが彼の度胸には恐れ入ってしまう。
また北岳という、富士山の次に高い山に高度差千メートル近い、日本で一番長くまた標高も高いとされる大岩壁がある。此処を登ろうと僕と洋一は計画していたのだが、急に洋一が船に乗ることになったので僕はザイルパーティーが居なくなって困っていたら、洋一が
「おい、あそこは女も登る所だぜ」
と、急に言い出した。
「いや、確かに女も登っているが、男に引っ張り上げてもらって登ったんだ。それがどうかしたか?」
「ほ、ほーう。お前、女が登るところを登れないのか?」
「でも、ザイルパートナーが居ないじゃないか?」
「一人で行きゃいいじゃねえか?」
「ひ、一人ってあの岩壁を単独で行くのか?ザイルなしでか?」
「そうやぁ」
「落ちたらどうするのか?」
「そりゃ、お前、運が悪かったと思って諦めな」
「・・・・・・」
「洋ちゃんだったら単独で登れるかも知れぬが俺りゃ自信ねえなぁ」
「ほ、ほーう。お前、女が登るところを登れねえのか?」
「でも、ザイルが有るのと無いのとでは違うじゃねえか。墜落した時に止まるのと下まで落ちるのとは全然違うぜ。それもあの長い岩壁じゃなぁ・・・」
「ほ、ほーう。それじゃお前、俺が単独で登って帰って来たらどうするか?カッコ悪いなぁ。お前、女が行く所をだなぁ・・・・」
と、えらく女にこだわる船乗りの洋ちゃんととりとめのない議論をして、僕も「うむ・・・単独で行ってみようかなぁ・・・?」と思い悩んでいたが、結局、一般登山ルートから単独で行くようになった。そして、雲の切れ間に聳え立つ岩壁を眺めながら「洋ちゃんもひどいこと言うなぁ、あんな所、単独で行けるかい」と煙草を吹かして独り言を言っていた。洋一なら単独で行けたであろう大岩壁である。
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