2013年3月6日水曜日

72今どき破天荒な男達の物語


 さて、この僕らの仲間の船乗りの洋一が結婚することになった。彼は仲間のうちでは一番所帯じみていて、若い頃から、「人間は子孫繁栄をせにゃいかん」と、口癖のように言っていた男である。
 彼は仲間の中で、何時結婚してもおかしくない存在であった。外食はせずにアパート暮らしであったが休暇中、アルバイトへ行く時は弁当を作っていた。
 僕らが彼のアパートで酒を飲んで寝ていたら、朝早く、ジャーと玉子焼きを焼く音がして、寝ている僕らに
「じゃ、俺は仕事に行くけど煙草の火とコタツの火だけは冗談じゃ済まされんからのぉ!」
と、名言を吐いて出て行った。
 彼は男前なのだが、あまり女性と話したことがない。以前、車の中古を買う、というので僕がついて見て廻っていた時、おもしろいおっさん(オーナー)と知り合いになり、そこの店へよくひやかしへ行っていた。オーナーと言っても事務員が一人居るだけの小さな事務所であるが・・・。
 洋ちゃんがよくそこへ行きたがるので、おかしいなぁ・・・?と思っていたら、そこの事務員に気があるらしく、洋ちゃんにしては珍しく話しかけていた。おやっ?と思い聞き耳を立てていると
「あんた、生まれは何処かい?」
「国東の真玉町です」
「ほ、ほーう、それじゃうちの兄貴の嫁さんと一緒じゃ」
「そうですか・・・?」
「そうや・・・」
「・・・・・?」
「・・・・・・」
これで会話が途切れてしまう。僕は傍で聞いていておかしくて、帰りに
「おい、お前、警察官の尋問じゃないんだからもっと違ったことは言えんのか?」
と言ったら不機嫌な顔をしていた。
 また彼は非常に人見知りをするので人の多く集まる所へは行かない。山下のペンションも、日曜日には絶対に行かない。山の帰りに、通り道なので
「おい、山下の所でコーヒーでも飲んでいこう」
と誘うが行かない。
 むろん、喫茶店も行かず、以前、山下が勤めていた奇麗好きのマスターの店はキラキラとして女の娘も多く、僕や三郎たち仲間はよくそこへコーヒーを飲みに行っていた。が、洋一だけは山下に用事のある時だけ、透き通る店の窓ガラスをトントンと叩いて、山下を手招きで呼んでは道路で彼と話をして用事を済ませていた。ちょっとコーヒーでも飲んで行けというが、その女の娘の大勢いる店へは絶対入らなかった。

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